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2000/12/22

<韓国文化>新文芸坐、しにせ名画座の灯消えず

東京・池袋 新文芸坐
 しにせ名画座の灯消えず
 遊技業最大手 マルハンが「功績」受け継ぐ

 東京・池袋にこのほど、映画館「新文芸坐」がオープンした。経営不振で休館した旧「文芸坐」を、遊技業界最大手のマルハン(本社・京都市上京区、韓昌祐会長)が引き継ぎ、同地に「マルハン池袋ビル」を新設。3階を「新文芸坐」として運営することになったものだ。オープニング記念として、戦後日本映画特集を来年1月末まで日替わり上映中だ。


 新文芸坐は、マルハンの経営理念である①地域社会への貢献②安らぎの場の提供③エンタテインメントの提供|に基づき、最新設備を備えている。

 音響設備は、関東地区で初導入となるドルビーデジタルEXを設置、場内も壁面に音を吸収する特殊合板を使い、最高の音質を提供している。映写設備はイタリア・シネメカニカ社製の35㍉全自動映写機、客席数は266席で座席を広くとり、カップホルダーも備えている。また場内での飲食や立ち見を禁止するなど、快適な映画観賞環境を保証した。

 ロビーには休憩室を備え、売店には映画関連資料を数多く準備、またラウンジ壁画には、イラストレーターの和田誠さんによる「20世紀の名作イラスト」125点を展示するなど、従来の映画館にはない雰囲気を備えている。

 29日まで「戦後日本映画 時代が選んだ86本(第1部)」を上映中で、30日から来年1月12日までがトムクルーズ主演のアクション映画「M:I―2」(ミッション・インポッシブル)、1月13日から30日までが「戦後日本映画 時代が選んだ86本(第2部)」となっている。

 客の入りも上々で、オープン初日の12日には、朝から熱心な映画ファン70人が並び新文芸坐の門出を祝った。その後も年代・性別を超えて、広範な映画ファンが押し寄せている。映画の感動を深く伝えるため、ゲストトークも随時行われており、あす23日には「男はつらいよ」や「学校」シリーズで人気の山田洋次監督が、日本映画の魅力と自作について語る。その後も27日に井上梅次監督、28日に石井輝男監督がゲストトークを行う予定だ。


 映画への情熱を語る  韓昌祐・マルハン会長

 ファンに感動与える映画を

 ――映画事業への進出のきっかけは。

 文芸坐は半世紀の歴史を持ち、名画の上映館として人気を集めてきたが、建物や設備の老朽化、観客の減少による経営不振で97年3月に閉館した。

 当社は現在、関東以北への積極展開を行っており、東京は渋谷、新宿で遊技場をオープンさせている。池袋にも出店を考えていたので、立地条件の良さを見て買収に動いたが、その時に旧経営者の三浦大四郎氏から「土地を売る条件として、映画館を継続してくれないか」との打診があった。10年ほど前にミニシアターの全国展開を考えたこともあったし、映画産業進出の第一歩にもなればと考えて引き受けることにした。

 ――会長の映画への関心は。

 戦後、貧乏学生だった私は、食費を削りながら新宿の映画館に通った経験がある。「田園交響楽」という映画を見た時、そこで流れていたメンデルスゾーンの「バイオリンコンチェルト」やラフマニノフの「ピアノ協奏曲」など美しいクラシックの調べが、いまも耳に残っている。それがきっかけでクラシックファンになった。

 また一世を風びした戦後イタリアのネオリアリズム映画「戦火のかなた」などにも、深く感動した記憶がある。

 名画座の原点は、人に感動を与える映画を上映することだと思う。文芸坐は大きな功績を残してきた。それを胸にきざみ、良い映画を上映していきたい。新文芸坐オープンを記念して、和田誠さんが寄贈してくれたイラストもすばらしいものなので、ぜひ鑑賞してもらいたい。

 ――映画産業の現状をどう見るか。

 観客が映画からビデオに流れていったのは、設備投資やサービスが不十分だったからだ。最高の座席、音響、映写設備を備えれば、観客は必ず戻ってくる。新文芸坐は最高の設備を備えた。

 最近はシネマコンプレックス(複合型の映画館)も各地に出来て、映画産業復興の兆しがある。当社にも、静岡でシネマコンプレックスをやらないかとの話が来ている。今回の新文芸坐の運営を通して映画産業のノウハウを学び、今後に生かしたい。

 ――映画製作の計画は。

 映画館の経営だけでなく、将来は映画製作にも進出したいと考えている。最近の映画界は娯楽映画が多く、先ほど話した「田園交響楽」や、ヘミングウェイ原作の「老人と海」のような、人にうるおいと感動を与える映画が少なくなった。
 映画はやはり人に感動を与えないといけないし、そういう映画を提供すれば、観客も戻ってくるのではないか。韓国の著名な音楽家族、鄭明勲、鄭京和氏らの家族一代記が映画化できれば、これは面白いと思う。

 ――最後に、21世紀の在日文化をどう考えるか。

 作家、プロスポーツ選手、ベンチャー企業経営者など、この間多くの人材を在日社会は輩出してきた。21世紀はさらに出てくるだろう。在日映画人も、これまで以上に優秀な人材が登場してほしい。期待している。


 韓昌祐会長略歴

 ハン・チャンウ 1931年慶尚南道生まれ。兄を頼って15歳で渡日。苦学の末、法政大学経済学部を卒業。遊技業を柱とする(株)マルハン(本社・京都)の会長。在日韓国商工会議所名誉会長。韓国の無窮花勲章などを受賞。夫人との間に4男2女。大のクラシックファン。


 永田稔支配人の話

 必ず観客呼び戻せる

 ビデオ全盛の時代だが、映画の感動はやはり、大きなスクリーンで味わってもらいたい。文芸坐は半世紀の歴史を持っている。今回、映写機と音響機器は最新、最高の設備を用意したし、場内の壁にも吸音材を使って音がはね返らないようにしている。ロードショー館に負けない広々とした座席も用意した。必ず観客を呼び戻せると信じている。

 旧経営者の三浦大四郎さんと新経営者の韓昌祐会長の二人の情熱が、劇場の隅々まで伝わるような運営をしていきたい。ぜひ足を運んでほしい。


 「戦後日本映画―時代が選んだ86本」上映日程

 【第1部】(12月12日から)23日=幸福の黄色いハンカチ/家族▽24日=砂の器/黒い画集|あるサラリーマンの証言▽25日=東京オリンピック/私は二歳▽26日=クレージー黄金作戦/ジャンケン娘▽27日=嵐を呼ぶ男/紅の翼▽28日=網走番外地|大雪原の対決/新網走番外地|嵐呼ぶダンプ仁義▽29日=忠臣蔵外伝四谷怪談/赤穂浪士▽=
 【第2部】2001年1月13日=HANA‐BI/戦場のメリークリスマス▽14日=天国と地獄/踊る大捜査線▽15日=儀式/心中天網島▽16日=砂の女/不良少年▽17日=復讐するは我にあり/日本昆虫記▽18日=白い巨塔/海と毒薬▽19日=サンダカン八番娼館 望郷/泥の河▽20日=軍旗はためく下に/仁義なき戦い▽21日=もののけ姫/銀河鉄道999▽22日=サード/祭りの準備▽23日=太陽を盗んだ男/青春の殺人者▽24日=月はどっちに出ている/どついたるねん▽25日=家族ゲーム/それから▽26日=Love Letter/櫻の園▽27日シコふんじゃった。/大誘拐|RAINBOW KIDS▽28日=鉄道員<ぽっぽや>/Shall we ダンス▽29日=お葬式/ラヂオの時間▽30日=ゆきゆきて、神軍/コミック雑誌なんかいらない!


 「文芸坐」のあゆみ

1948. 2 小説家、三角寛が東池袋に映画館「文芸会館人世坐」設立
52.12 板橋に「弁天坐」オープン
55.12 現在地に「文芸地下劇場」オープン
56. 3 現在地に「文芸坐」オープン
66.10 オールナイト興行開始
68. 7 「人世坐」閉業し売却
70. 6 「弁天坐」閉業し売却、2館のみに
71.11創業者、三角寛死去
79. 7 「文芸坐ル・ピリエ」オープン
97. 3 「文芸坐」「文芸坐2」「ル・ピリエ」閉業
2000.12 マルハン経営による「新文芸坐」として再開業