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2000/10/27

<韓国文化>読書

■■■読 書■■■

 「誰も書けなかった 朝鮮半島5つの謎」 黒田勝弘著

 南北頂上会談以後の情勢を辛口で分析

 6月の電撃的な南北頂上会談の実現で、東アジアの緊張緩和と南北統一がにわかに現実のものとなってきた。北朝鮮の変化はほんものなのか。

 本書は、ジャーナリストとして20年におよぶ韓国駐在経験をもち、現在も産経新聞ソウル支局長として韓半島の動きをつぶさに見つめるコリアウォッチャーの第一人者が南北頂上会談と北朝鮮情勢を分析した辛口時評である。

 著者は、今回の南北頂上会談について、金大中大統領の「包容政策」の成果よりも、金正日書記が金大統領を出迎えた空港で見せた「抱擁政策」が際立ち、外交術では北朝鮮が上手だったと分析する。

 韓国は頂上会談を成功させるため、国民やマスコミに「箝口令」を敷き、北の批判や悪口を封じ込めた。韓国社会は「反北朝鮮」から「親北朝鮮」に180度転換し、ちょっとでも北を非難すれば「反統一的」として槍玉にあがる。これでは、「太陽政策」でマントを脱がされたのは韓国のほうではないか、と著者は手厳しい。

 一方、北朝鮮も韓国への誹謗中傷をやめたように見えるが、「南北交流に慎重論を唱えた李会昌・ハンナラ党総裁に対して名指しで李会昌ノム(ヤツ)」と批判するなど、体質は変わっていないと説く。

 北朝鮮が態度を軟化させ、頂上会談に応じたのは、金大統領が「北を吸収統一する考えはない」と明言し、無条件の援助を約束したためで、金大中政権が「親北政権」と判断したためだという。従って韓国の次期政権が金大中路線を継承して引き続き「包容政策」をとらなければ、南北の雪解けが後退することも十分に考えられると著者は指摘している。

 「アジアの金融危機とシステム改革」 法政大学比較経済研究所ほか編

 韓国の経済危機からの回復前向きに評価

 97年7月のタイに始まった通貨危機がアセアン諸国、香港、韓国などを襲った。それは単なる通貨危機にとどまらず、銀行危機、経済危機へと深刻化した。予想もできない広範囲の危機の広がりであり、その真因をめぐってさまざまな分析がなされた。

 本書はアジアの金融システム改革という中長期的視点からアジアの金融危機に迫った 分析書であり、対象国は韓国など8カ国。金融システムが抱える構造的な問題点に光をあて、改革の行方を展望している。

 韓国については68㌻をさき、50年代以降の金融制度の概略を説明、金融危機については韓国の研究者の分析を紹介している。そしてIMF体制下の金融改革作業に触れ、評価と課題を提示した解説書だ。

 韓国の通貨危機の背景については次のように分析している。

 金融が韓国経済のアキレス腱であるといわれながら、韓国経済が成長を持続し、金融システムが国際市場の圧力から守られている間は、その矛盾が顕在化することはなかった。だが、96年のOECD加盟の契機に自由化・国際をを否応なく進めざるを得なくなり、加えて拡張主義的な財閥経営にかげりが見え始めると、韓国金融システムの脆弱性はいっきょにさらけ出された。

つまり、韓国経済の病弊である「金融不実」を露呈したということだ。だが、災い転じて福となすというが、この病弊を治癒するためには抜本的な金融システムの改革なしには経済再生が不可能であるとの国民的コンセンサスを形成でき、金融改革を可能にした。そして、経済危機からの回復だけでなく金融システムが本来の機能を健全に発達させる歴史的課題を遂行していると前向きに評価しているのが特徴だ。

 現在大詰めの段階にある金融・財閥改革が韓国経済にとっていかに重要であるかが理解できる本でもある。

「韓国は変った、日本はどうする」 百瀬 格著

 現場で感じた韓国との協力案を示す

 3年前に出版した「韓国が死んでも日本に追いつけない18の理由」が韓日両国で話題となった、元韓国トーメン会長の百瀬格氏の新著。

 南北首脳会談前後の韓国内の状況、日本に対する視線の変化などを紹介しつつ、”韓国は変わった、日本はどうする”と、日本の読者に突きつける。

 筆者はまず南北首脳会談について、「韓国人がいま望んでいるのは、北朝鮮との早急な統一ではなく交流であり、それによって戦争の危険がなくなるだけでもだけでも大きな成果」であり、「韓国ビジネス界も北のインフラ整備の困難さから、北という市場にすぐに進出できるとは考えていない」として、日本は韓国と常に共同歩調をとりながら、北朝鮮と接する必要があるとする。
 韓日関係においては、「1919年の独立運動を記念する3月1日に、朴泰俊総理(当時)からゴルフに誘われた。それほど韓国は、(昔の反日意識と比べて)大きく変化している。日本人も普通に韓国と付きえあるように、韓国人の習性を知る努力をしないといけない」とする。

 そして歴史認識についても、「まず韓国の言い分を聞くことから始めよう」と力説する。

 韓日経済については、韓日が協力して中国という巨大マーケットに働きかけることが、韓日がともに発展する道であると説く。

 ほかにも、韓日共同による漁業会社の設立、韓日共同のシンクタンク作り、日本の介護問題解決のために韓国人看護婦を導入してはなど、現場から見た韓日協力が提案されていて興味深い。