アジア・太平洋、中南米、アラブ・アフリカ諸国の絵本作家の創作活動の奨励と絵本の振興・発展を目的にユネスコ・アジア文化センター(ACCU)が隔年で開催している「野間国際絵本原画コンクール」の12回目の入賞作品がこのほど決まった。54カ国308点の応募の中から韓国の作家がグランプリに次ぐ次席を獲得した。
今回入賞したのは、グランプリ一人、次席二人、佳作10人、奨励賞21人の計34人。韓国からは6人の応募があり、李恵京さん(35)の「色づくり名人」が次席に入賞した。
李さんは梨花女子大学情報デザインかで修士号を取得した作家。実は、李さんは前回11回のコンクールでも佳作を獲得しており、今回はグランプリはならなかったが連続の入賞となった。
ブックデザイナーで今回のコンクールの審査委員長を務めた杉浦範茂氏は李さんの作品について、「個性的な作品をつくる力を持っている。白黒の世界を描くアイデアは秀逸。今後上の賞を目指すとすれば、人物をもっと思い切って表現したほうがよい」と評している。
「色づくり名人」は7枚の作品で構成されている。色が付いた世界から白黒の世界への移り変わるアイデアは巧みで、杉浦氏もそこを評価している。また、人物を思いきり誇張した表現も独特で、この点については、審査員の間から「個性的な表現が小さい子供に恐怖を与えるのではないか」という意見が出た。一方で、別の審査員からは「繰り返し読みたい気持ちを起こさせるかもしれない」と、印象を与える表現として評価する意見も出たという。
過去のコンクールを見ると、韓国は2度グランプリに輝いており、質の高い作品が寄せられるという。だだ、今回は応募作品が減った。その理由についてACCU図書開発部の佐々木万里子さんは、「韓国の作家のレベルが上がり、伊ボローニャの絵本原画展など質高いコンクールに応募するようになったためではないか」と推測する。
入賞作品は8月に東京の展示会で公開されたあと、9月にはスロバキアのBIB(ブラチスラバ国際絵本原画展)でも展示される。来年は長野県の池田町立美術館などで展示会が開かれる予定。このほか、野間コンクールのインターネットサイトが近く公開される。