いわゆる“教科書問題”のあおりを受け、この半年間、やや低調な感は否めない韓国での日本文化解禁ブームだが、こちら日本ではワールドカップ前年ということもあって、「JSA」など韓国映画が牽引車の役割を担う空前の韓国ブームが続いている。
4月初めに東京でチョ・ソンモの来日公演が成功裏に実現したが、、以後日本の大手レコード会社、エイベックスと業務提携した韓国の大手プロダクション、SMエンタテインメントや日韓で意欲的に事業展開しているソニー・ミュージックエンタテインメントなどが活発な動きを見せている。
すでにSMエンタテインメントは、提携後初のアルバム「K-POP100%」(AVCD-18007)および「S・E・S」(AVCD-18005)の2枚を6月初めにエイベックスから発売し、強力なプロモーションを展開中だ。
来る8月24日には、ZEPP TOKYOでショー・ケースライブも開催予定で、S・E・S・そしてH・T・Oなどスーパー・アイドルたちの熱いステージに早くもKポップ・ファンの注目が集まっている。
一方のソニーも、かつて韓国で社会現象とまで形容され、一世を風びしたメガ・アイドル「ソテジ・ワ・アイドル」が所属したレーベル、アンティノス・レコードにKポップ専門の「N・U・K・E・S・」レーベルを立ち上げ、その第1弾として2枚のアルバムをリリースした。
これまでも、Kポップといえばイコール、ダンスミュージック的なイメージが強かったのだが、現地のメインストリームと化した、ヒップホップやR&B、オルタナティブやロックの超定番をダイレクトに紹介する試みは業界内でも初めてで、今後の反響が大いに気になるところだ。
今年3月の発売以来、GROOB編(ARCJ2001)、ALTERNATIVE編(ARCJ2002)ともに好調な売り上げを記録しており、中でも、すでに来日公演が話題を呼んだ男女4人からなるバンド柴雨林(ジャウリム)など人気のメジャー・アーチストがフューチャリングされているのも売りで、さらなるブレイクを期待したいところだ。
ここ2―3年のKポップの変貌ぶりは大胆かつ急激で、ここに紹介した4枚のアルバムを聞き比べただけで、ある時は本場米国のR&Bをしのぐクールでソフィスティケートされた感覚、またある時はNYやパリのクラブ・シーンでも通用しそうなディープでパワフルなサウンドを、体験することができるが、ここに来て今やそのグローバル化はとどまるところを知らないといっても過言ではないだろう。
ところで、韓国でのJポップの新たなトピックをいくつか紹介すれば、何といってもアコースティック・ピアニスト倉本裕基の活躍を挙げなければならない。
韓国デビューからちょうど3年半を迎えた彼の世宗文化会館公演もさる5月21日夜、成功裏に終了。
すでに100万枚以上のアルバムを売り上げたブームは、3年を経たいまもまったく衰えを知らない。
テレビ・ドラマ主題曲を集めた第6弾アルバム「SCENERIES IN LOVE」も大きな反響を巻き起こしており、現地の所属先C&Lミュージックでは、韓国の著名なアコースティック奏者とのジョイント・レコーディングを実現したいとの希望も表明している。
最後に、この春、人気アイドルPOSITIONが放った日本楽曲のコンピレーション盤について紹介しておこう。
尾崎豊の「I LOVE YOU」や因幡晃の「わかって下さい」などJポップの名曲を韓国語訳して収録したアルバムがいま、韓国でロング・セラーを更新中だ。以前、本稿でも紹介したワン・ソフト・マルチ・ユースの本格的成功例と相成ったが、さすがバラードが強い人気を誇る韓国音楽市場だけに、ポジションの饒舌な歌声もすばらしい仕上がりぶりを見せており、近い将来の日韓音楽交流に明るい展望を抱かせる会心作の誕生に拍手を贈りたい。