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2001/04/27

<韓国文化>「時調」じわり広がる

 韓国の定型詩である「時調(シジョ)」が在日社会で少しずつ広まっている。草の根運動として創作活動している「在日の時調(三行詩)の会」(金一男代表)はこのほど、昨年に次いで会員の作品集「在日の時調(三行詩)」第2集を発刊した。この中から3人の作品を紹介するとともに、作品への思いや時調の魅力などについて作者に聞いた。

 時調は3行詩(1行30文字以内)というスタイル上の枠はあるが、短歌や俳句と比べ制約が少ないため、素人でもつくりやすい。表記言語はハングルでも日本語でも、英語など他の言語でもよい。

 金一男代表は第2集刊行の辞で、「『在日』のための自己表現と発信のための器とすることを志すため」と作品集の発刊の目的を述べている。

 金七圭さん(55、在日2世、会社員)は、第1集発刊のときに誘われ活動するようになった。それまで詩作の経験はなかった。「国籍、言語にしばられず、折々に浮かんだ心象風景を詩的表現でつづったもので、セミプロ文芸同人誌と異にした巧拙を離れたところに時調の良さがある」と金さんは語る。

 作品の「死」は、1月に死去した実兄がモデル。14年ぶりに再会を果たした兄はすでに棺に横たわっていた。在日を体現した一人で、生あるうちに言葉を交わす機会を得たなら、どのような会話があり得たか、との思いがあったという。

次の世代に文化を発信

 「えべっさん」を寄せた金日龍さん(49、在日3世)は大阪の民族学校・金剛学園の教師。時調をつくるようになってまだ1年ほど。職業柄、テーマは学校の生徒たちの表情や触れ合いがほとんどだ。金一男さんは、「生徒たちの日常がのびやかに語られているし、子供たちへの愛情が率直に出ている」と評価する。

 「えべっさん」は、生活指導での経験をよんだもの。金さんは、「子供たちを日々見ているといろいろな表情をしている。小さい子と接していると童心に返ることもある。そうした気持ちをよんでいる」と語る。いまでは子供たちと一緒に時調をつくっており、時調によって次の世代に在日文化を発信したいという。

 エッセイストで主婦の趙栄順さん(45、在日2世)は第1集から作品を寄せている。詩は書いていたが、時調は30年ほど前に手がけたが中断し第1集発刊のときに再び始めたという。時調の魅力については、短歌などと違い制約なく自由な形でできるところ、という。

 作品の「抱擁」は昨年初めて実現した南北頂上会談がモチーフ。「統一への過程で弾圧があったり、犠牲者も出た。そういう歴史への気持ちをうたった」と語る。作品は気持ちが動いたときにつくるようにしているという。

 金一男さんは、「チャレンジしてみれば、表現することの楽しみと価値が見いだせる」と語り、時調の輪が広がることを期待している。