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2002/09/06

<韓国文化>韓日音楽事情-音楽ジャーナリスト 川上英雄-

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                   川上 英雄 氏

 驚異的なパワーで世界の強豪を相手に堂々たる力量を示した日韓共催サッカー・ワールドカップも成功裏に終了した韓国では今、目前に迫った『釜山アジア競技大会』へ向かって再びエンタテインメント・シーンが盛り上がりを見せている。

 すでに北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の参加も決定した本大会へは、日本や中国も大選手団を派遣する予定で、W杯で世界4強入りを果たしたあの興奮が、再び韓国全土を覆うのも時間の問題と言えそうだ。

 そんな国民的な盛り上がりを見せる中、釜山アジア競技大会組織委員会(BAGOC)は、人気ポピュラー歌手、イ・ムンセが歌う『アジアの夢』など8曲収録の公式アルバムを制作、発売した。

 近年、台湾・香港を中心に人気沸騰中のKポップだが、、メーンタイトル曲『アジアの夢』は、ミナト釜山とアジアとの関わりを詩い上げた秀作で、秋のヒット・チャートを必ずや賑わすことになるだろう。

 さらに、開催地釜山市のマスコットでもあるカモメをイメージし楽曲化した『ドゥリア』(韓国語で『あなたと私が共に』の意味)は、一般国民への公募により選定されたコーラス曲だ。

 ところで、W杯開催にちなみ数多くの音楽ソフトが日韓両国でリリースされたのも記憶に新しいが、アジア初のベスト4強進出を果たした韓国チームの最強サポーター集団『赤い悪魔』のW杯応援歌CDが来たる10月23日パイオニアLDCより日本でも発売される。

 〝大韓民国〟(テーハンミングク)-の掛け声と手拍子は我が国でもすっかり有名になったが、臨場感溢れるその様子も実況風サウンド・イフェクトにて収録。

 ユン・ドヒャンバンドによる『オー必勝(ピルスン)KOREA』を中心に全11曲をフューチャリングしている。

 ジャケットに目をやれば、W杯韓国国家代表チームや赤い悪魔の写真などもグラフィカルに収録、Kポップ、ファンのみならずサッカー・ファンなら誰もがゲットしたくなる、正に時代の息吹を後世に伝えるメモリアル・アルバムとしての登場だ。

 現地の歌謡界では未だ日本語による日本製楽曲の発禁は続いているものの、今年上半期に於いても少なからぬ日本人のアーチストが海峡を渡り韓国音楽市場進出を果たしている。

 この秋、韓国デビュー5周年を迎えるアコースティック・ピアニストの倉本裕基が自身のオリジナルを初めて韓国市場向けに単独録音した話題の新作『タイム フォー ジャーニー』が、洋楽チャートでロング・セラーを更新しているのを筆頭に、日本の大型女性アイドルとして人気が高い倉木麻衣の全曲英語による米国録音盤なども地味ながら確実にファン層を獲得している。

 また、著名な米国のロック・グループ、ディーライトのメンバーとして活躍、その後日本をベースにサウンド・クリエイターとして音楽的才能を発揮するトウワ・テイが去る8月に来韓、吉本興業のサポートによるライヴ公演を成功させるなど一段と幅広い音楽交流が続いている。

 日本の若者たちに圧倒的な支持を得ているビジュアル系バンド、GLEYの来韓公演など、小さなライヴ公演もしばしば開催され、少なくとも若い世代の間では東京とソウルの音楽的時差はほとんど無いに等しいと指摘することが出来るだろう。

 「良いものは良い」と自然に共感し合える日本と韓国の音楽ファンの増加は正に嬉しい限りだが、映画『シュリ』や『JSA』のようなブレイク作がなかなか現れないのも、言わば日韓両国で音楽の多様化が着実に進んでいるからと解釈できなくもない。

 願わくは、来年こそ全面相互交流の解禁を期待するのは筆者ばかりであろうか。


  かわかみ・ひでお  音楽ジャーナリスト。1952年、茨城県土浦市生まれ。日本大学芸術学部卒。著書に「激動するアジア音楽市場」など。