指揮官の条件 白ソンヨップ著
創建間もない韓国軍の初代陸軍大将に33歳で就任した著者が、韓国戦争を
戦い抜いて導き出した指揮・統率の要諦を著した本だ。
熾烈な戦いが繰り広げられた韓国戦争の3年間(1950―53年)、戦野を歩き抜き、師団長、軍団長、参謀総長として部隊を指揮する一方、休戦会談では韓国軍代表として交渉にあたった。
師団1万人の兵の動かし方や作戦立案の仕方、人事の決め方、人材育成と組織のつくり方、将兵の心理や糧穀の手配、情報の扱い方など指揮官として戦局ごとに数々の判断を下してきた。
その豊富な実践と経験に裏打ちされているだけに、書かれている内容は具体的であり説得力がある。指導者は一番のファイターでなければならない、指導者はどんな事態にも決して驚いてはならないという指摘もいちいち頷ける。
「およそ兵たる者の第一の資格は忠誠と規律とである。勇気のごときは第二の資格たるにすぎない」(ナポレオン・ボナパルト)。
本書は8章からなるが、各章ごとに歴史上の人物に中心命題を語らしておいるのもいい。ナポレオン戦争を総括したクラウゼヴィッツの「戦争論」、中国古来の兵書である「孫子」「呉子」など武経七書からの的確な引用も多く、知的刺激も多く楽しめる。
これは戦時における指揮官のあるべきリーダーシップを示したものだが、現代においても会社経営者をはじめ各界の指導者に難局打開のヒントを与えてくれるだろう。(草思社、四六版、270㌻、1700円)
日本の死体 韓国の屍体 上野正彦・文國鎮著
貧乏人であれ、金持ちであれ、死は万人に等しく訪れる。しかし、その死に様は千差万別で、病死、事故死、怪死とさまざまだ。本書は、韓国法医学の草分け的存在で大韓法医学会名誉会長の文國鎭氏と元東京都監察医務院長の上野正彦氏が、長年携わってきた死体解剖の経験から韓日の「死体」について語り合った異色の対談集である。
韓国では、「死体解剖をすると、二度死ぬ」と言って忌み嫌う。このため、犯罪事件などの遺体解剖が遺族の反対でやりにくいという。事実、文國鎭氏は、ある殺人事件の被害者を解剖しようとして遺族に斧で襲われ、命拾いした経験をもつ。これは、死んだ人間はあの世に行き、この世でできなかったことをやりとげるという思想が韓国にあるためで、父母から受けた身体髪膚を傷つけるのは親不孝と言う儒教の教えが浸透しているためだという。
また、よそで死ぬと「客死」といって死体を家の中に入れない風習があるため、韓国人は決して病院で死にたがらない。
病院で死にたいと願う日本人と大きな違いだ。このほか、男が好きな女を独占したいために、女の腹にたばこの火で自分の苗字「河」を焼き付けた「貞操帯事件」や男に無理やりキスされて相手の舌を噛んだ「舌切り女事件」、火葬場で発覚した新妻殺しの話など、文國鎭氏が鑑定を担当した男女の奇怪な事件が紹介されており、ミステリー小説を読むよりおもしろい。
韓日の文化比較についての書物が数多く出版されているが、「死」「死体」を通じて両国の民族性の違いや死生観を浮き彫りにした本はこれが初めてで、新たな韓国が見えてくる。(青春出版社、四六判、223ページ、1300円)
日本へ行こう 今井久美雄編纂・金利真翻訳
日本で勉強したい、日本に留学したい。しかし、日本に知人もつてもない。
こういった韓国人のために、留学書類の書き方、ビザの取得方法、日本での受け入れ先、日本の生活習慣、文化など懇切丁寧に解説したガイドブック「日本へ行こう」(ハングル版)が韓国で発刊された。
川崎市で内科・いまいクリニックを開業する今井久美雄さんが武井一さん(高校の韓国語講師)など仲間の協力を得て編纂したもので、91年に発刊したものを内容を一新し改訂した。
今井さんは、韓国に留学した経験をもち、韓国人留学生を支援するため、自宅を改造して下宿として開放するなど、支援を続けてきた。ガイドブックは、長年留学生の世話をしてきた今井さんの経験から、韓国人が日本で生活するのに困らないように、役所の手続きから住居の探し方、電話のかけ方、電車の乗り方、銀行や郵便局の利用方法まで、こと細かに解説してある。
また、床屋や美容院に行って髪を切るときにどう説明したらいいかなど一般のガイドブックには載っていない生活に密着した事柄まで網羅してあり、非常に役立つ。
日本文化の紹介、観光案内、日本料理、食事の作法の解説なども便利で、これ一冊あれば、留学生にとって「鬼に金棒」だ。
今井先生は、「韓国人留学生のために作ったが、韓国語を学ぶ日本人にも読んでほしい。韓国に行って日本のことを紹介するの時などに役立つだろう」と話している。日本での入手は駒沢大学図書館、三中堂書店、メロス言語学院へ。(東亜日報社、415ページ、1万5000ウオン)