◇恨半島 尹浩根著
現在の北朝鮮東部の貧しい家に生まれた著者が共産勢力の統治を嫌い、列車の屋根にしがみついてソウルに脱出した。日本の植民地支配から解放直後の1945年10月のことだった。故郷には親、兄弟を残してきた。ここから波乱万丈の人生が始まることになる。本書はその77歳に至るまでの伝記だが、ひとりの外交官として激動の韓国現代史と共に歩み、その時々の思いをつづっているのがとても興味深く、また深い読後感を与えてくれる。
北から徒手空拳で南下してきた若者にとってソウルでの生活は大変だったが、アジア初のニューヨーク・タイムズ紙の通信員を経て、小さいころから夢見てきた外交官の道に入る。国交正常化前の日本で韓国代表部の書記官として勤務した経験があり、韓日条約反対デモが荒れるソウルで信任状を提出した木村・初代大使の緊張した面持ちを同乗したリムジンで見つめるなど歴史の裏側も語っている。
韓国の自主外交を貫こうとして在韓米軍司令官と対立して、外交部第4位の儀典長から左遷される気骨の人でもある。駐ニューヨーク総領事兼国連大使を最後に、80年に粛軍クーデターで登場した全斗煥政権下で事実上解任されるが、実に多くのエピソードが語られており、歴史事実の補強にもなる。
著者はこう述べている。「私にとって最大の問題は朝鮮の再統一であり、故郷に戻って父の墓を探し、愛する姉やその家族と再会することが最後の願いだ」
南北分断の痛みはいまも癒されておらず、本書のテーマも重いものがあるが、それを忘れさせる実に率直な筆致が素晴らしい。(エネルギーフォーラム、四六判、313㌻、1800円)
◇世界を揺さぶる韓国パワー メイド・イン・コリア研究会著
ワールドカップの韓日共催で、韓国が身近になっている。身近になれば韓国のことを知りたくなる。そんな若者たちにぜひ読んでほしい一冊だ。
どんな企業が活躍しているのか。インターネットは日本より2、3年は進んでいるというが本当なのか。どの焼き肉店にいってもある焼酎のJINROはなぜ成功したのか。「シュリ」以来、韓国映画の勢いがすごいが、韓国映画界の事情は日本とどう違うのか。韓国パワーの源泉はどこにあるのか。
本書は、そんな疑問に答えてくれる韓国経済事情最新報告だ。まず、世界に飛躍するサムスン、ヒュンダイモーター(現代自動車)、KT(コリアテレコム)、ロッテなど有力企業のパワーの秘密を探る。例えばサムスン。最近、世界で初めて40インチの大型液晶テレビを発売すると発表して日本のメディアを驚かした。そのサムスンも5年前のIMF危機で苦境に陥っていたが、危機をチャンスに変える大胆な改革をしたことはあまり知らないのではないか。
ファーストフードの世界で、韓国は世界でおそらく唯一、マクドナルドにシェアを奪われていない国だろう。シェア1位は韓国企業のロッテリアだ。キムチバーガー、プルコギバーガーなど国民の嗜好にあった商品を相次いで開発していることもある。品質第一のロッテへの信頼もある。
ワープロソフトで日本の一太郎はマイクロソフトのワードによって駆逐されてしまったが、韓国のアレアハングルも同じ危機にあったが、これを救おうと市民運動が起こったのも韓国の特徴だろう。市民記者1万5000人を擁するインターネット新聞が力をもつ社会でもある。読み終えて、日本との違いもわかり、韓国がより一層近くなる気がするだろう。(WAVE出版、四六判、208㌻、1500円)
◇まんが韓国史 張碩訓原作/石渡延男監修
昨年、「あたらしい歴史教科書をつくる会」が編纂した中学の歴史教科書が検定を通過したことに対し韓国で反日運動の嵐が吹き荒れ、韓日間の外交問題にまで発展したことは記憶に新しい。歴史をめぐるあつれきは、過去にもたびたび起き、両国の友好親善の「トゲ」になっている。
韓国では、過去に植民地支配を受けた経験から歴史教育に熱心で、韓日関係史を徹底して教える。これに対して日本では韓国の歴史や両国の関係史については空白に等しい。このため、多くの日本人は隣国の歴史についてほとんど知らず、大きなギャップが生じている。
本書は、韓国で子ども向けに発刊された「マンガ韓国史新聞」の翻訳本である。建国神話から大韓民国の樹立まで、韓国5千年の歴史が凝縮されており、子どもたちがまんがを通じてたのしく歴史がわかるように構成されている。とはいえ、単なるまんが本と大きく異なり、史実に丁寧な解説がつけられ、おもしろ、おかしく読みながら、きちんと歴史が身につくように構成されている。1441年に発明された測雨器など、写真や図版もふんだんに使われ、ひと目でわかる。
韓国で発刊されたものであるため、日本ではなじみのない史実や人物が登場し、韓国の通史を手軽に知るにはもってこいの本といえるだろう。小学生から中学生向けに発刊されたものだが、大人が読んでも十分たのしく、「目からウロコ」の韓国の歴史が学べる。監修は石渡延男・日韓教育実践研究会代表。
(インターブックス、B5判、208㌻、1980円)