大学教授と漫画家の2つの顔を持ち、日本を分析・紹介したマンガ「コリア驚いた!韓国から見たニッポン」が韓国でベストセラーとなった李元馥・徳成女子大産業美術学科教授が、このほど来日した。「コリア驚いた!韓国から見たニッポン」は、昨年夏に日本語版が出版され話題となった。日本の政治・経済・文化を鋭く分析し、マンガに表現した李教授の講演要旨を紹介する。
高校1年生のとき、たまたま新聞社へ遊びに行ったら、アルバイトしないかと誘われて私の漫画家人生が始まった。そのとき要求されたのは創作漫画ではなく、外国漫画のコピーだった。当時、ちばてつやさんや「巨人の星」を描いた川崎のぼるさんなどキラ星のような日本の漫画家に強く感銘を受け、多くの技法を学んだ。
大学時代、創作漫画を描くようになり、このままでは日本の漫画のスタイルから抜け出すことができないと切実に感じ、ドイツ留学して根本的にスタイルを変えることにした。
欧州へ行って私の人生を変えることになる「アストリックス」という漫画に出会い、欧州の人々のメンタリティーを学んだ。さらに全ての情報を早く、面白く伝えることができる無限の漫画の可能性について再発見した。
そして私は漫画の新しいジャンルとして教養漫画を思いついた。教養漫画とは、社会が必要とする情報をわかりやすい媒体である漫画で提供するものだ。ドイツ留学中の1981年から6年間、韓国で欧州6カ国の歴史・文化を描いた教養漫画「遠い国、近い国」を韓国で連載した。この一連の作品は、韓国人に大きな衝撃を与えた。
日本編は準備に12年かかった。実は日本編を出すにあたって非常に悩んだ。韓国には日本による植民地の経験があり、韓国で日本に関する本を反日的に書けば親日派から、親日的に書けば反日派から非難を受ける。
親日でも反日でもそこから離れて日本という国を日本と見ずに、ひとつの外国として見る視覚が必要なのにそれができないでいる。
結論としては韓国人は日本人をわかっていなかったのだ。日本を知らずに親日だ反日だという流れに、ただ流されていた。
現在私は韓国編に取り掛かっている。韓国人は案外自分のことはよくわかっていない。
韓国を客観的に見るために学説や文献に依拠せずに自身の経験や伝聞などを総合するために努力している。
この本の最も重要なテーマは、なぜ韓国、中国、日本の3国は隣合わせにあるにもかかわらずこんなに違うのかということから始まっている。仏、独、英は近くにありながら違うと言われているが、この3国はキリスト教を信心し、フォークとナイフを使い、文化はラテン文化にその源を発している。
漫画的発想からかも知れないが、韓国、中国、日本3国の特徴・違いは地理的な条件から来るのではないかと考えた。日本は島国で、韓国は半島で、中国は大陸だ。ここで言う半島とは3方を海で囲まれているということではなく、強大国と接して常に外敵の脅威にさらされ、侵略されてきた位置を言っている。
韓・中・日の3国を表す適当な言葉がないかと考えた。中国の場合は「一」、1つの中国、1番の中国、自分一人の中国という3つの解釈がこの「一」にはある。
島国の日本は「和」と言う言葉で語れる。島国は四方を天然の要塞である海に囲まれていて侵略が容易ではない。重要なのはその中でいかに平和に暮らすかということだ。
一方、半島の国・韓国は2000年の歴史の中で3000回外敵から侵略を受けてきた。このような歴史の中で韓国人にとって重要なことは「生存」であり、政権維持だった。
民族の血を守るために正統性を重んじ、元々のものを変形・わい曲しない「忠」という半島的特徴が韓国にはある。