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2003/11/21

<韓国文化>伝統音楽に在日新世代の息吹

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    在日の若手音楽家、舞踏家で結成された「散打」。在日による新しい音楽表現を目指す

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    ミン・ヨンチ  1970年、大阪生まれ。金剛学園中等部卒業後、韓国留学。ソウル大学校音楽学科卒業。

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    ウヒ 本名・蔵重優姫(くらしげ・うひ)。1973年、大阪生まれ。大阪教育大学卒。韓国人間国宝の金千興氏に師事。

 在日3世の韓国伝統打楽器奏者、閔栄治さん(写真:2番目)が、在日の若手音楽家、舞踊家とともに音楽グループ「散打(サンタ)」(写真:1番目)を結成。伝統音楽に在日新世代の息吹を吹き込んだ新しい音楽作りを目指している。閔栄治さんとメンバーの1人の優姫さん(写真:3番目)に話を聞いた。

 閔栄治さんは韓国スーパー・パーカッション・グループ「プリ」のチャング奏者として、また大阪にある韓国伝統芸術グループ「黎明」の音楽監督として、韓日で数多くの公演を行ってきた。チャングの奏法で最も難しいといわれる超絶技法をこなすパワフルなプレーヤーだ。日本では上々颱風、林英哲、梁邦彦などの個性あふれるプレーヤーとの共演も経験している。

 2001年の日本公演を最後に「プリ」を脱退。現在は日本に拠点を移し、様々なプレーヤーと共演する一方、音楽監督なども務めている。韓日国民交流年となった2002年の1月に行われた「NHKニューイヤーオペラコンサート」にゲスト出演し、見事なチャング演奏で話題を呼んだ。そして在日メンバーによる新しい音楽表現を作り出す決意を固め、「散打」を昨年4月に結成。ライブ活動を始めて今日に至っている。

 ◆多彩な表現目指す  閔栄治さん

 韓国人のメンバーと共に「プリ」を結成し活動してきたが、作曲活動、演奏活動を続ける中で、やはり育った環境の違いにより、音楽の捉えかたにも差があることを痛感した。

 韓国の音楽、そしてミュージシャンは感情表現が激しく、押しが強いが、日本は感情を抑えて、引いて歌う。パンソリの歌い手は歌声でろうそくの火を消す練習をするが、そこに押すという表現が表れている。

 もう一つ伝統音楽の場合、日本は伝統を固守するが、韓国は先生から習った伝統音楽をアレンジすることに割りと寛容な社会だ。「プリ」で伝統音楽をモチーフにポップス的な要素を取り入れることが出来たのも、そういう土壌があるからだ。その「プリ」で韓国人メンバーと音楽創りをしてきたが、15歳で韓国留学した自分でも、先ほど述べたように限界を感じた。そこで同じ土壌で育った在日のメンバーを募って、新しい音楽表現、舞台表現にチャレンジすることにした。

 具体的には伝統打楽器を使って"押す"も"引く"も表現する、エンタテインメント集団といえるかもしれない。歌手を例にとると、美空ひばりさんはその両方を表現した大歌手だった。

 「散打」は演奏活動を通じて両方を表現したいと考えており、それが閔栄治の音楽、「散打」の音楽と呼ばれ、在日の音楽表現の一つと評価されれば、とてもうれしい。歌も歌うが、日本語、韓国語、英語をチャンポンにした無国籍な表現を目指している。それもいまの在日を象徴してはいないだろうか。


 ◆世界の舞踊取り入れたい  優姫さん

 在日としての音楽表現・舞踊表現があり得るのか、また創り出せるのかと自分なりに考えながら散打に加わっている。これまで在日韓国人は、祖国の伝統文化をそのまま受け入れて習ってきたが、それにずっと疑問を持ってきた。

 私は母が在日韓国人、父が日本人のダブルで、日本の文化、舞踊も知っている。韓国伝統舞踊に日本や様々な世界の舞踊を取り入れた表現を創り出したい。それが在日というより、"在日3世の舞踊表現"ということになるのかも知れない。舞台でどこまでそれを表現できるか、ぜひ在日の若者に来てほしい。

 

 ◆ 散打ライブ ◆
  11月23日 午後6時=大阪・バナナホール
  12月 3日 午後7時30分=東京・初台TheDOORS
  12月23日 午後6時=愛知・TOKUZO得三
  入場料はいずれも前売3,500円、当日4,000円。
  TEL03・5453・8899(M&Iカンパニー)