韓国を代表するソプラノ、金英美(キム・ヨンミ)さんの主演するリサイタル「キム・ヨンミ 日韓ジョイントリサイタル」が11月9日、東京の浜離宮朝日ホールで開かれる。これまで日本でオペラ「椿姫」、ガラコンサートなどに出演したことはあるが、リサイタルを開くのは初めてだ。この催しを企画・運営している橋本喜美子さんに、文章を寄せてもらった。
昨年10月、東京オペラシティで開催された「音楽はアジアから-日・韓・中オペラ・ガラ・コンサート」に足を運んだ時のこと。赤い清楚なドレスで登場した4人目の韓国ソプラノ歌手のヴェルディ作曲「神よ、平和を与え給え」に、息を呑むほどに聴き入り、私自身の40年近くの声楽人生を根本的に覆されるような衝撃を受けた。
プログラムを開き、ソプラノ、キム・ヨンミーの名を確認し、欧米を舞台に素晴らしい経歴を積み、韓国では国民的なオペラ歌手として一級の評価を受けている歌手であることを知るに至った。
その時から、「キム・ヨンミさんとは一体どういう人なのか?」と、彼女について詳しく知りたい気持ちが脳裏を離れず、もっと彼女の歌を聴いてみたい思いが募っていった。ぜひ日本でリサイタルを実現させて、その本物の歌声一人でも多くの日本人に紹介してみたい気持ちを抱くようになった。
驚くべきことに、30年前、ヨンミさんと私は留学先のローマ国立サンタ・チェチリア音楽院で同門であったことがわかった。その時の教授がレッスンのときに、彼女を讃える話を繰り返していたことも思い出された。
ヨンミさんはイタリアでの9年間の厳しい修行で、アジア人を感じさせない正統的なイタリアオペラスタイルとベルカント唱法を身につけられ、透明で大らかな響きが曲の一音一音に注がれていて、私が未だかつて聴いたことがない新鮮で洗練されたソプラノ歌手だ。マリア・カラス国際コンクール最優秀賞受賞など、その実力は世界的に認められている。
「真の演奏とは聴衆にとって、その音楽を聴く前と聴く後では人生観が変わってしまう程でなければならない」とある著名な声楽家が語っているが、ヨンミさんはまさに、技術に傾くことなく、聴く者の心に真の感動を与える音楽家である。
私事になるが、私は自らの声楽家グループに「イ・ソリスティ」(独唱者たち)という名前を付け、人々に崇高なる感動を与える声楽を目指している。私はまさにその理想型をキム・ヨンミさんに見出した。ぜひ多くの皆さんに、キム・ヨンミさんの歌声に接して頂くことを願って止まない。
キム・ヨンミ ソウル生まれ。ソウル芸術高校卒業後、ローマ・サンタ・チェチリア音楽院入学。1980年マリア・カラス国際声楽コンクールで最優秀賞。韓国をはじめ世界でプリマドンナとして活躍している。
◆ キム・ヨンミ リサイタル ◆
日 程:11月9日午後6時
場 所:浜離宮朝日ホール
料 金:S6,000円、A4,000円
TEL:03・5476・4971(韓国文化院)