在日3世の康和恵さんは、ドイツのドレスデン州立歌劇場バレエ団でファーストソリストを務め、将来を嘱望されているバレリーナである。今月中旬には韓国国立バレエ団創立40周年「スペシャルガラ」公演に出演し、注目を浴びた。2月2日にはバレエスタジオミューズの大阪公演に出演する康さんに話を聞いた。
恵まれた容姿と長い手足、卓越した表現力を持ち、クラシックのみならずモダンもこなす多彩なバレリーナだ。現在、ドレスデンバレエ団のファーストソリストを務める。
同バレエ団は年70回ほどの公演を行うが、その半分の公演でソリストをこなす。表現力に加え、気力、体力とも充実していなければ出来ない仕事だ。2001年にはドイツを代表するダンサーの一人マリー・ヴィグマンの名を冠したマリー・ヴィグマン賞を受賞した。
「得意な演目は『白鳥の湖』と『ジゼル』。それにノイマイヤー作品の『幻想・白鳥の湖』『ダフニスとクロエ』など。作品の内容、主人公の気持ちをどれだけ理解し、繊細な感情表現がどれだけ出来るか、いつも考えている。その努力が認められたと思う。バレリーナとしてソリストは夢だったが、それが欧州で実現し、しかも賞までいただいて本当に光栄だ」
バレエを始めたのは5歳のとき。すぐに頭角を現し、数々のコンクールで入賞。93年、15歳でモスクワのボリショイバレエ学校に留学。
「ロシアのバレリーナはプロポーション、筋肉など体つきから違うし、伝統に裏打ちされた表現力がある。とても劣等感を感じたし、東洋人はバレエに向いていないのではと落ち込んだ時期もあった。しかし、練習で克服するしかないと考え、バレエ漬けの日々を送った。韓国国立バレエ団で現在プリマの金ジュオンさんは同期生で、アジアの仲間同士、励ましあえたことも良かった」
95年、ローザンヌ国際バレエコンクールでスカラーシップ賞を取り、審査委員の一人だったハンブルクバレエ団の芸術監督ノイマイヤー氏に見出され、96年にドイツへ。
「ボリショイは伝統的なロシアバレエのスタイルを守っているが、ドイツバレエはいろいろなものが入ってきて作られ、モダンバレエも広くやっている。幅を広げてみたかった」
2002年8月、欧州を襲った大洪水で劇場も大きな被害を受け、公演中止に追い込まれた。
混乱の中で団員も将来の選択を迫られたが、康さんは「自分を育ててくれたバレエ団を見捨てることは出来ない」と、近隣の劇場を借りて観客も数十人という中での公演、他のバレエ団との合同公演などを行う一方、劇場復旧のカンパ活動などにも尽力した。
「洪水直後は正直言って移籍を考えたこともあったが、いまは残ってよかったと思う。団員が力をあわせて復旧できたことは、今後の励みになる」
海外での活躍が注目され、1月11日に行われた「韓国国立バレエ団創立40周年記念スペシャルガラ」にもゲスト出演し、「パキータ」を踊って絶賛された。
「とても楽しく充実した舞台になった。国立バレエ団の人たちと一体感が出来たのは私をコリアンとして認めてくれたからかもしれない。韓国のバレエ団はなかなかレベルが高く、将来が楽しみ」
ドレスデンで新しい演目や振り付けに挑戦した後、将来は日本に戻りたいとの希望もある。
「いつか日本や韓国を拠点に活動してみたい気持ちもあるので、機が熟すのを待ちたい。バレエの魅力を韓日や在日の子どもたちに伝えられたらと願っている」
バレエ公演「それからのアリス」は、2月2日午後4時30分、大阪・梅田のシアタードラマシティで行われる。康さんは主役のアリスを演じる。入場料7500円。℡06・6536・0749(バレエスタジオミューズ)。