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2004/03/12

<韓国文化>80年代の社会矛盾を映画化

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    ポン・ジュノ  1969年生まれ。延世大学卒業後、韓国映画アカデミーで学ぶ。「ほえる犬は噛まない」(00)で長編劇映画監督デビュー。本作「殺人の追憶」(03)は2作目。

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    主役の刑事を演じるソン・ガンホ㊧とキム・サンギョン=「殺人の追憶」から

 韓国で大ヒットした映画「殺人の追憶」が、27日から全国公開される。80年代に実際に起きた連続女性殺害事件をテーマにした映画で、作品の完成度が高く評価された作品だ。このほど来日した奉俊昊監督に話を聞いた。

--「殺人の追憶」が韓国で大ヒットした要因は。

 実話を扱った映画は今まで韓国でヒットしたことがなかったので、実は大きな期待はしていなかった。ヒットしたのは、一つは主人公の刑事たちの人間的な熱い爆発的な感情を、たとえそれが行き過ぎたとはいえ、忠実に見せようとした点が観客に訴えたようだ。

 2つ目は実際の事件で、しかも未解決な猟奇的事件だった点が観客の心を動かしたのではないかと思う。

--撮影での苦労は。

 撮影現場探しだ。80年代という時代背景が、雰囲気だけでなく主題としても重要であった。しかし、急激に開発が進む韓国で、わずか15年前とはいえ、80年代と変わらない農村風景を探すのには大変苦労した。撮影場所を探して全国を回ったため、私たちの撮影チームには『流浪劇団』というあだ名が付いた。その甲斐あって韓国的な風景を美しく撮ることができた。

--映画に描かれた警察捜査体制の不備、自白強要に驚いたが、現在はどうなっているのか。

 映画の背景である80年代は軍事政権下時代であったためか、取調中の殴打や脅迫による自白の強要は、警察では日常茶飯事だった。国民もそれに慣れてしまっていた。

 映画の中で刑事たちが行ういいかげんな捜査、例えば巫女(ムーダン)に犯人を占ってもらったり、小さな証拠を捏造したりすることは、実際そのような事例が多くあったし、刑事本人にも話を聞いて確認している。

--映画の背景となった80年代当時の監督自身の経験、エピソードは。

 中高生時代は常に何かの国家行事に動員されて、辟易したことを鮮明に記憶している。映画の中に民間防衛訓練や大統領パレードで女子学生が制服を着て並んでいる場面が反復して出てくるが、何かの資料を調べたのではなく私の実体験に基づいたものだ。

 80年代後半に盧泰愚政権になったが、軍事政権は続いていた。その時期には大学に入学していたが、連日学生デモが行われていた。私も授業に出るよりデモに行くことが多かった。

--映画監督を志したきっかけは。

 テレビの週末名画館を楽しみにしていた。どのようにして撮るとあんなに面白い映画ができるのだろうかと考えた。そのようにして知らず知らずのうちに映画について学んだのかもしれない。 また、父親が美術を専攻していた影響からか、私も子どものころから自分で物語を作って漫画を描いていた。今でも映画の絵コンテは自分で描く。

--映画監督への道程は。

 映画サークルに入って短編映画を撮影していた。サークルでは8㍉フィルムやビデオカメラで撮影していた。大学卒業後、韓国映画アカデミーに入った。海外留学経験などはなく、アカデミー卒業後は映画界で助監督生活を始め、映画「ユリョン」にシナリオ作家として参加。99年に初監督作品「吠える犬は咬まない」を撮った。

--韓国映画界の現状について。

 韓国映画産業は現在いい状況だ。ひとつは内容面で、過去の政治的検閲や内容、素材の制限などがなくなった。「殺人の追憶」も恐らく80年末から90年代初だったら様々な制裁があったはずだ。どうして警察を無能に描くのかとか、未解決の事件をなぜ映画にするのかといった風に。最近はそのようなことはないので、誰もが自由な素材で映画表現ができる。

 2番目は韓国映画産業の市場における成功。2003年度の韓国市場における韓国映画市場占有が50%に肉薄し、ハリウッド映画を初めて超えた。韓国人が韓国映画を愛するようになり、昨年それが最高潮を迎えた。

--今後の予定は。 

 3作目のシナリオを書いている最中だ。具体的な内容は明かせないが、ソウルのを舞台に奇妙なことが起こる話。特殊効果なども使うつもりで、10、11月にクランクインする。
 まだ2本しか撮っていないし、30代中盤とまだ年齢的にも若いので、映画監督としての一生のテーマといったものを固めているわけではない。今は何が出来るか、自分自身を試している。ただ、どのような映画を撮るにせよ、韓国社会はどのような社会なのか、韓国社会を理解したいという気持ちが根底にある。韓国社会は複雑で、理解しにくい社会だからだ。

--韓日文化交流について。

 韓国で日本大衆文化開放、日本で韓流となるのは当然のことだ。実際、同じアジアであり、近い国でありながら互いの大衆文化ではなく海外のハリウッド映画や米国のポップスを楽しむことの方がむしろおかしい。

 個人的にも日本映画は大好きで、今村昌平監督を尊敬しており、監督の全作品のDVDを収集するために奔走している。ほかにも黒沢清監督、阪本順二監督、青山真治監督なども好きだし、宮崎駿監督のアニメは子どものころから見ている。

 「殺人の追憶」の音楽監督は岩代太郎さんという素晴らしい音楽家で、お互いの感性が似ていてスムーズに作業ができた。
 今後も韓日での共同制作やスタッフの交流などが多く行われることを望む。