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2004/11/26

<韓国文化>天才画家・張承業に迫る―映画『酔画仙』の林権澤監督に聞く

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    イム・グォンテク  1936年生まれ。『豆漢江よさらば』(62年)で初監督。『曼陀羅』(81年)でベルリン映画祭コンペ部門に進出。『将軍の息子』(90年)と『風の丘を越えて~西便制』(93年)では、韓国国内で公開当時最大のヒットを記録した。さらに『春香伝』(2000年)で、韓国映画初のカンヌ国際映画祭出品を果たし、『酔画仙』で遂に監督賞を受賞した。セザール賞最優秀外国語映画賞にもノミネートされる。これまでに監督した作品は100本近くにも及び、名実共に韓国を代表する映画監督である。今年は、『下流人生』が公開されている。

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    放浪の画家、張承業を熱演するチェ・ミンシク

 第55回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した話題作『酔画仙』が、12月18日より東京の岩波ホールで公開される。数奇な運命を経て宮廷画家に上り詰めた天才画家・張承業(チャン・スンオプ)の生涯を、韓国を代表する俳優チェ・ミンシクが演じる。来年には国立博物館でその絵が展示されることも決まった。来日した林権澤監督(写真・上)に話を聞いた。

――韓国美術史には様々な偉人が存在するが、その中で朝鮮朝末期に活躍した張承業を選んだ理由は何か。

 張承業の生き方に共感する部分が非常に多かったことが挙げられる。彼は今から100年ほど前に生まれ、幼くして孤児になり、20代で天才画家としての名声を確立した。その姿に(自分は孤児ではなかったが、)若くして家を出て20代で映画監督として有名になった自分が重なった。そして、その後の放浪を重ねた熾烈な人生、芸術家として常に努力と精進を重ねていく姿勢に共感を覚えた。酒をよく飲み、女性が好きだったところも私と同じだ(笑)。

 また、40代になって2児を設けた自分と、生涯結婚をしなかった主人公が重なったということも、選んだ理由として挙げられる。

――チェ・ミンシクを主人公に選んだ理由は。

 張承業という劇的な人生を送った人物の20代から50代までを演じなければならないということで、演技力が非常に卓越した人でなければ演じきれないと思った。そのため、チェ・ミンシクを選んだ。また、画家としての精神的苦悩を主人公の精神世界に入り込んで演じられるのも、彼しかいないと思った。

――実際に張承業の作品を撮影に使ったのか。

 彼の作品は韓国国立博物館、ソウル大学博物館にある。また、個人が収蔵している作品もある。本物を使ってみたいと考えたが、撮影してみると色がうまく出ないので、あきらめて複写したものを使うことにした。ある著名な画家をはじめ10人前後の画家に依頼して複製を作ってもらった。

――日本のファンにどう映画を見てほしいと考えているか。

 大きく分けて3つある。一つ目は、東洋画というものがどういう絵世界を持っているものなのか分かると思う。映画の中に、東洋画に関する基礎的な情報が散りばめられているからだ。

 二つ目に、人生において自分がやりたいと思ったことを成就させる過程を、主人公の生き方を通して学ぶことが出来る。必至になって生きることがいかに美しいことかを学ぶことが出来る。彼は52歳で行方不明になったが、最後まで絵に対する執念を持っていた。
 
 三つ目に、映画全体を通して大きな東洋画を見るような感覚を味わうことができるだろう。それが、カンヌ国際映画祭でも評価されたと考えている。

――20代で監督業をはじめたということだが、映画の世界に入るきっかけはなんだったのか。

 もともと、映画の世界に興味があったわけではなかった。韓国戦争が終わった頃だが、家が貧しく家を飛び出して釜山で肉体労働をしたりもした。その時に知人に誘われて映画の世界に入った。その後、食べていくために映画の仕事を続けて今に至っている。