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2004/11/05

<韓国文化>魅力的なテーマは"復習"

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    映画「オールドボーイ」から。主演のチェ・ミンシク

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    パク・チャヌク  1963年生まれ。西江大学哲学科卒。92年監督デビュー。2000年『JSA』が大ヒットしスター監督に。本作品で第41回大鐘賞(韓国版アカデミー賞)監督賞受賞。2002年『復讐者に憐れみを』と本作に続き、「復讐3部作」の最後を飾る最新作を現在準備中。

 日本のコミックを原作に韓国で制作された映画『オールドボーイ』が、明日から日本公開される。第57回カンヌ国際映画祭(2004年5月)でグランプリ(審査員特別大賞)を受賞した話題作である。来日した朴賛旭監督に話を聞いた。

――原作を読んだきっかけと映画化の経緯は。
 
 ポン・ジュノ監督に面白いからと勧められていたが、本が手に入らなかった。プロデューサーのキム・ドンジュ氏に映画化の依頼を受けて初めて原作を読んだが、2人の主人公の隠された秘密、精神的にアウトサイダー(孤独)な2人が敵に対して愛を持つ設定に興味を抱いた。映画化は自然な成り行きだった。

――チェ・ミンシク、カン・ヘジョン、ユ・ジテの3人のキャスティングについて

 チェ・ミンシクについては、彼との仕事を念願していたので決まってよかった。ヒロインは韓国であまり知られていない女優を使おうという事になり、公開オーディションを行い、満場一致でカン・ヘジョンに決まった。イ・ウジン役は時間がかかった。というのも、登場時間が短く、それでいて(普通の俳優では)チェ・ミンシクには負けてしまうので誰も手を挙げたがらなかったからだ。
 
 ユ・ジテを提案したのはチェ・ミンシクだった。実年齢が若いので迷ったが、姉の死によって成長が止まっていてもおかしくないと判断し、脚本を送ったところ承諾を得た。彼とはセリフの一言一言まで討論しながらキャラクターを作っていったが、予想以上に期待に応えてくれた。
 
――撮影中のエピソードは。

 オ・デスとミドのベッドシーンだ。韓国ではベッドシーンを撮る際は必要最低限のスタッフ以外は外に出る事になっており、今回彼女は初めてだったのでとても緊張していて、少し撮っては毛布を掛けるという事を繰り返していた。でも撮影が進むにつれて慣れてきたのか、スタイリストが毛布を掛けにいっても必要ないと言い、逆に周りが恥ずかしくなってしまった。

――赤・緑・紫などシンボリックな印象の衣装が多いが。

 全ての要素が強烈で意味がある、としたかったからだ。例えば彼のヘアスタイルは怒りや憤りを表現している。また広い監禁部屋をイメージするため、強烈な色を出してほしいと美術担当に依頼した。超ファンタジーを表現したかった。

――監督は復讐をテーマにした作品を続けている。一方で分断の問題など社会的発言も積極的だが、映画にどのように反映されているか。

 世の中の動きを探ったり関係性を見ていくと、暴力的な要素が多いのを感じる。だから暴力を描いている。復讐というテーマは時代と場所を越えて、どんな人間にもアピールするテーマだ。けれども近代国家では復讐は許されていない。禁じられていることは、私にとって魅惑的なテーマだ。

――この作品ではオ・デスとイ・ウジン、復讐する方とされる方、二重の復讐を描いているが。

 人間の精神はとても複雑で、それを表現するには二重性が必要と考えたからだ。復讐は一方的なものではなく双方向的なもので、復讐者と犠牲者という2人の人間関係が必ず存在する。そして最後には2人とも破滅に向かう。それが創作意欲を刺激する。

――原作者(土屋ガロン)の印象は?

 土屋ガロンさんは一つの日常を孤独に生きてきた方だな、と感じた。簡単な言葉の裏に深い洞察力と考えがある、と思った。話の展開の予測が何故つかないのかと聞いた所、自分自身もわからないので、読者も余計わからないのだと語った。私もストーリー全体を考えて作るのではなく、1シーンずつ作り上げていくので共通点がある。

――日本の監督で好きな人は。韓国ブームについては。

 黒澤明、成瀬巳喜男、鈴木清順、阪本順治、黒沢清監督が好きだ。韓国にはいい映画が数多くあるし、ペ・ヨンジュン以外にも素晴らしい俳優が多くいるので(笑)、関心を持ち続けてほしい。