韓日期待の若手ピアニストが9月に東京で共演する。韓国の林東赫(20、イム・ドンヒョク)(写真・上)と日本の中野翔太(20、なかの・しょうた)(写真・下)の2人で、(財)江副育英会が若手音楽家育成のために毎年開催しているコンサートに出演し、ショパン等の名曲を披露する。
2001年12月、ロン=ティボー国際音楽コンクールで1位になったのが弱冠17歳だった神童・林東赫だ。ピアノ部門6人の入賞者のうち3人を韓国、日本で占めるなどアジア勢の躍進が目立ったコンクールだったが、その中でも林は、美しい音色とロマンティックな表現力で聴衆を魅了、堂々の優勝を遂げた。
林は84年ソウル生まれ。7歳でピアノを始め、14歳でモスクワ音楽院の中央特別音楽院に入学した。
林はヨーロッパでも有数の夏の音楽フェスティバルにゲストとして参加。ロン=ティボーコンクール以降、フランスのほとんどの音楽雑誌で表紙を飾るなど、「天才少年」として世界の音楽ファンの注目を集めている。
注目されるのは、2000年にイタリアで出会ったマルタ・アルゲリッチだ。林東赫の未来に、熱い視線を注いでいたアルゲリッチは、20歳にも満たないこの青年と多くの話をし、自身のコンサートに林を立たせもした。
アルゲリッチの勧めで新鋭音楽家としてEMIと契約、CD録音を済ませた。デビューCDは日本でも発売されている。
今年2月にはソウルの芸術の殿堂でリサイタルを開いた。9月にはソウル、大邱、大田など韓国の主要都市でリサイタルを開く。
現在はドイツのハノーバー音楽大学に在学中。
日本ピアノ界の新星、中野翔太は84年生まれ。96年全日本学生音楽コンクール小学生の部で全国1位および野村賞受賞。99年第15回「東京の夏音楽祭」で卓越したテクニックと豊かな音楽性を披露し、一躍注目を集めた。
その後、初リサイタルが好評を博し、また小澤征爾、デュトワ、スラトキンら世界の巨匠と共演し、絶賛された。7月には「東京の夏音楽祭2004」でピアノリサイタルを行い、ラフマニノフ、ショパン、ラヴェルの名曲に挑戦し、好評を博した。99年ジュリアード音楽院に留学、現在は同音楽院でカプリンスキーらに師事している。
「育英会の資金のおかげで勉強に打ち込むことが出来、感謝している。今後は曲のレパートリーを増やし、演奏に厚みを持たせたい。(9月の)林君との共演はとても楽しみ」と話す。
『(財)江副育英会第10回コンサート』は、9月23日午後6時30分、新国立劇場中劇場で開催。第1部では下原千恵子、砂川涼子をはじめとした日本の若手歌手の代表ともいえるオペラ歌手たちが重唱を披露する。第2部ピアノ部門で林東赫はショパンのルカローレ(舟歌)嬰ヘ長調作品60、ピアノソナタ第2番変ロ短調作品35「葬送」、中野翔太はショパンのバラード第1番ト短調作品23、ノクターン第8番変ニ長調作品27-2、ポロネーズ第5番嬰ヘ短調作品44を演奏予定。A席4,000円、B席2,000円、学生席1,000円。TEL03・5466・3181(日本オペラ振興会チケットセンター)。