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2004/07/16

<韓国文化>たゆたう絹のささやき

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    ベイ・ヨンジン  ソウル生まれ。1984年東国大学大学院(韓国画専攻)修了。95年にソウル仁寺洞に「COSER」オープン。99年パリセレクションデコに出品。

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    韓服を現代的にアレンジしたイブニングドレスが紹介された(二期倶楽部で)=photo by JIMI

 韓国を代表するファッションデザイナーのひとり裵英鎭(ベイ・ヨンジン)。韓国でも評価の高い裵さんの作品を日本で初披露した「大陸からたゆたう絹のささやき~BAE Young Jinの美世界~」が、約200人の観客が見守る中、このほど那須・二期倶楽部で開催され、好評を博した。その美の世界を紹介する。

 裵英鎭の作品は韓国の優美な伝統衣装、韓服(ハンボク)を現代的なイメージで繊細にアレンジした独自の世界を展開している。そのデザインは「COSER(コゼール)」というブランド名で韓国のアーティスト、俳優など著名人から若い世代まで多くの人々を魅了している。日本でも数多くのファンを持ち、今後ニューヨークと東京への進出を予定している。

 今回のイベントは、現代音楽家でヴィオラ奏者のキム・ジョンヨンと現代舞踊家のリュウ・ジェミがそれぞれ裵英鎭デザインの衣装を身にまとい舞台に登場し、公演を行うなど、従来のファッションショーとはかなり趣が異なるものだった。

 繭から紡いだ糸をそのまま使った生絹でひだを寄せて作ったイブニングドレスには、昔の枕に付いていた野の花模様の刺繍がきれいに施されており、青、赤、黄、白、黒の伝統的な五方色の糸でカラムシの生地に細かくステッチしたドレスは可愛らしい印象だ。

 絹を一筋一筋手でほどいたものや、木蓮模様の赤い緞子をウエストの部分に太くあしらったものもあった。最後に登場した色とりどりに蝶々が飛翔するの刺繍の入った豪華な黒い繻子のドレスは、フィナーレを優雅に飾った。

 素材は上質の絹や木綿を用いており、そのプリミティブなテイストにより、より素材のよさを引き立たせるものとなっている。使用される布はすべてオリジナルで、特に絹は、本来持っているその様々な特徴を生かした独特の手触りとふわりとした質感をたたえている。

 日本での初イベントでイブニングドレスを発表したことについて裵英鎭は、「韓服は世界的に馴染みが薄く、新しいという理由だけでは世界の舞台で競争できない。韓国的な素材を使用していても世界のファッションの流行の要素を無視することはできない。最近の流行はビンテージ・ロマンティシズムなので、韓国の絹織物や外国のリネン、シフォンをうまく融合させている」と話す。

 彼女は、今回のショーのフィナーレで左右非対称にひだが寄った橙色のシルクのジャケットにジーンズ、足元はプーマのスニーカーを合わせて舞台挨拶を行った。裵英鎭の服はそれだけで着ると非常に格調高いものだが、カジュアルな服装にもよく合う。

 ソウルの仁寺洞に「COSER」という名前のブティックを開いたのは1996年。東国大学で韓国画を専攻し、彫刻家の夫と共に80年代後半スペインに留学した彼女は帰国後、輸入靴の店を営みながら、韓服の縫製と天然染色を学んだ。「COSER」とはスペイン語で縫い物をするという意味だ。

 世界的にも大いに注目されている。1999年4月英女王エリザベス2世が訪韓した際、女王は「COSER」を訪れ、空色のワンピースを購入している。2002年には世界的なファッションブランド『エトロ』の婦人服メイン・デザイナー、ベロニカ・エトロがショップを訪問して服を購入している。

 さらに、2003年にはパーソンズ・スクール・オブ・デザイン(ニューヨーク)において韓国現代美術作家ホアン・ヨンスンとのコラボレーションの展覧会を行い、現代美術界からも大いに注目されている。