ここから本文です

2004/06/11

<韓国文化>子どもたちに音楽の大切さを!

  • bunka_040611.jpg

    東京フィルの楽員と交流する東京韓国学校の生徒たち(3日、東京韓学)

 韓国出身の世界的指揮者、鄭明勲(チョン・ミョンフン)さんが、「こども音・楽・館」を始めて3年目になる。子どもたちにクラッシク音楽の魅力を伝える活動だ。
 2002年からスタートした東京フィルハーモニー交響楽団の「こども音・楽・館」は、今年で3年目を迎える。指揮・監修は、鄭明勲。世界で最も忙しい指揮者のひとりだ。今、日本の人気指揮者ランキングでも必ずトップ3に入るマエストロの公演は、毎回満席。万雷の拍手で迎えられる。
 だが彼は、「初めて指揮者として日本に来たのは9年前になりますが、とても不安でした。」と、日本デビューをこう振り返る。日本で演奏をすることを何年も断り続けてきた背景には、日本と韓国の間の微妙な関係が頭にあったという。そんな不安を楽しみに変えたのは、まさに「音楽」だった。「聴衆との心の交流に韓国人も日本人もなかった。音楽という魔術の力をあれほど実感したことはない。」という。
 東京フィルのスペシャル・アーティスティック・アドヴァイザーに就任して3年目。今、最も力を注いでいるのが、こどもたちのためのプログラム「こども音・楽・館」だ。
 東京フィルの楽員が都内の小学校へ出向き、演奏とお話をもってオーケストラの魅力を伝えていく。その後、公開リハーサル、東京フィルの楽員全員と交流できる「楽器と遊ぼう」と続き、最後に本公演につながるようになっている。
 3年続けて訪れている東京韓国学校の生徒は、このワークショップを心待ちにしているようで、1年目よりも、東京フィルがぐっと近くなったようだ。(写真)今年は、フルートとハープ奏者がワークショップを行った。フルートを学ぶ小学6年生の金晶香さんは、ワークショップ後、こんな話をしてくれた。「音楽は、人の心を美しく優しくさせる。日本で鄭さんと東京フィルが、力強く一緒に演奏しているのを見て、とても感動した。日本と韓国は、もっと仲良くなっていいと思う。いつか日本と韓国の人たちが一緒になって、オーケストラで演奏をしたらいいと思う。」と話してくれた。
 東京韓国学校初等部の宋玲子校監は、「こどもたちの人間性を豊かにするという意味で、このような機会に本当に感謝している。」と語ってくれた。
 マエストロにとって「遠い国」であり続けた日本のオーケストラとの共演は、格別の思いがある。音楽を通して両国を結びつけたいという願いは強く、昨年にソウルで行った東京フィル公演は大変な評判を呼んだ。最終日、客席に向かって次のように語った。
 「東京フィルとは初めてソウルにきましたが、こんなに熱い拍手で迎えてくださり、大変嬉しく思います。昨年のW杯韓日共同開催もよかったですが、音楽はもっと素晴らしいと思います。音楽は競い合うのではなく、一緒になって作り上げるものだからです」
 2005年は、「日韓国交正常化40周年記念、日韓友情年」である。頭ではなく、心から本当に手をつなぎあう日が来ることを願う。(東京フィル広報課 松田亜有子)

◆ 「普遍の音楽を」 鄭明勲 ◆
 若い人たちにクラシック音楽のすばらしさを知ってもらうことは、非常に重要な仕事のひとつだと考えています。残念ながら多くの若い人たちは、クラシック音楽はむずかしいとか、自分とはあまり関係ないものだと考えています。私は彼らがこちらに近づいてくるのを待つのではなく、音楽家として、彼らにとってクラシック音楽がもっと身近になるようにベストを尽くしたい。
このように考えると、私は音楽を続ける勇気がわいてくるのです。
 クラシック音楽は美しいというだけではなく、少なくとも千年もの間、絶え間なく発展し続け、人類の歴史とともにその歩みを確かなものにしてきた、唯一の音楽だと認識しています。私はいつも音楽を「自分の音楽として」演奏することが大切だと思っています。私たちは、音楽を「われわれの音楽」として演奏しなければならないのです。われわれは「普遍の音楽」がより重要な意味を持つようになる次世紀に向けて、いまから準備をしていかなければならないのです。
◆ こども音・楽・館 ◆
「こども音・楽・館2004」は8月22日午前11時と午後3時の2回、東京・初台の東京オペラシティで開催。S席3000円ほか。℡03・5353・9521