2004年1月から韓国では第4次日本大衆文化開放が行われ、各分野で両国の文化交流がより一層盛んになると予想される。そんな中、幅広い年齢層から熱い支持を受けているカリスマシンガー、イ・ムンセさんが2月、来日コンサート『イ・ムンセ独唱会 The ORERA』を行う。来日したイ・ムンセさんに公演の抱負などを聞いた。
1978年テレビ「セブンティーン」のMC(司会)で芸能界デビューを果たしたイ・ムンセさんは、数々のヒット曲を出す一方、85年から96年までラジオ「星が耀く夜に」で20年間DJ(ディスクジョッキー)を務めるなど、長年韓国芸能界のトップスターとして人気を博してきた。
今でこそ1ジャンルとして確立しているバラードだが、韓国でこの分野を始めたのがイ・ムンセさんだ。
「私がデビューした20年前の韓国人の音楽嗜好は、若者が好む外国のポップソングか年配者の好む韓国トロット(演歌)の2種類しかなく、8対2で外国音楽が優勢だった。そういう状況の中で私がバラードを歌い始めると、外国のレコードしか聞かなかった若者たちが韓国の曲のレコードを買うようになった。これは非常に大きな変化だと言える。そうして、趙容弼や私が脚光を浴びるようになり、ビートルズの音楽を聞いていた人たちがラジオに韓国の音楽をリクエストするようになった。現在では、外国ポップス20%、国内アーティスト80%と20年間で状況が逆転した」
番組MCやDJでは聞く人の心を捉える軽快な語り口が印象的で、93年にはMBC演技大賞MC賞も受賞している。
「テレビのMCやラジオDJもしているが、あくまでも自分は歌手だと思っている。DJをやればその時々に一般の人々がどんな音楽を好んでいるかがわかり、人々の生の感覚を感じることができる。結局は音楽をより一生懸命やるために必要なことだ。考えてみれば、MCもDJも自分の音楽のために利用してきた。MCをする上で最も重視しているのは1人の人、あたかも妻や恋人、親友に向かって話しかけるようにしていることだ」
今回の来日では韓日両国の環境メッセンジャーという縁から、歌手さだまさしさんと会い、音楽や環境問題について意見交換をした。
「昔からさだまさしの歌が好き。恋の歌だけでなく、過ぎ去った子どもの時の思い出や家族や友人について歌っている点など私によく似ていると思う。ほかにも安全地帯やクワタバンド、カシオペアのライブビデオなどをよく見ている。文化交流というものは自然なものだ。私たちがソニーやトヨタなど日本製品を望むように、自然に望む文化に触れることができなくてはいけない。開放されることは自然の流れであり、文化交流によって大きな発展が両国にもたらされる」
今回の「イ・ムンセ独唱会」では、「愛が通り過ぎれば」「光化門恋歌」などのヒット曲や「赤い肌着」「マイラブ-シンスボン」などの新曲を弦楽構成により編曲して歌う。
「公演スタッフをはじめ舞台セット、装備や小道具に至るまで全て韓国から持ち込んで行わなければ同じクオリティーにはならない。日本側は韓国から全ての持ち込みを認めてくれた。スタッフは韓国から65人、日本から120人が動員される。わざわざ韓国に来なくても、日本にいながらにして韓国と同じ公演を楽しむことができる。観客を1人でも失望させないように舞台に臨む」
高校で声楽を専攻し、将来イタリア留学を考えていたが、父親の事業を継ぐため音大ではなく工学部に進学。そのせいなのか、コンサートのタイトルも「独唱会」。
「96年から始まった『独唱会』には『独創的な私だけのコンサート』という意味がある。毎回テーマを決め、第1回目は『イタリア歌曲』、第2回は『指揮者』、そして今回は『オペラ』。コンサート全体をオペラ形式にし、オペラ劇場に来た気分にさせたい。」
歌うことが何よりも楽しいと話すイ・ムンセさん。
「自分はやりたいことをやって収入も得て、人々から喝采を浴びているということは本当に幸せなこと。私の「独唱会」に来て、自由に歌い踊る私の幸せな姿を見て、エネルギーをもらって帰って欲しい」
◆ イ・ムンセ独唱会 The OPERA ◆
日時:2月29日午後3時/午後7時開演
場所:東京厚生年金会館(新宿)
料金:S席8,500円、A席7,500円ほか
電話:03・5448・9333(ALICE global)