猛暑の続く日々、体調をくずしたり食が進まない読者も多いことだろう。料理研究家の高根恵子さんに夏を乗り切る韓国料理を紹介してもらった。
どんな季節に食べてもおいしい韓国料理。特に暑い夏は焼き肉にパワーを求めたり、辛い味付けによる食欲増進を期待する事も多い。しかしいわゆる「夏バテ」と呼ばれるような身体全体の倦怠感や食欲不振の改善は、ただ食事の量が食べられれば良いという訳ではない。
暑さで消耗した身体のエネルギーや水分を効率よく補える様な食品の取り方をしたいものである。暑い時、麺類やパンなど単品で食事一食を済ませてしまう事はよくあるが、エネルギー源となる炭水化物は摂取できるがそれを充分に使う他の栄養素が不足しがちとなる。
また汗などで失われた水分の補給も飲み物からだけでなく野菜や果物など多くの食材から摂取する事でその水分代謝に必要なビタミン、ミネラル類を同時にとることができる。手軽さに負けてつい単品で大切な食事を過ごす事のないように心がけたいものだ。幸い、多くの韓国料理にはたくさんの食材を使うメニューが多い。これは自然と栄養バランスがとれる利点である。
「バランスのとれた食事を!」とよく表現されるが、これは身体のエネルギー源となる炭水化物(ご飯、パン、麺、芋類など、砂糖や砂糖を多く使用した菓子類などに含まれる)や身体の組織を作る材料となる脂質とたんぱく質(魚介類、肉類、乳製品、大豆製品などに多く含まれる)、さらにこの炭水化物、脂質、たんぱく質が体内で充分に使われるために各種ビタミン類、ミネラル類(果物や野菜、海藻類などに含まれる)をとれるような多種類の食材を用いて作られた食事の事である。
NHK衛星で放映中の大人気韓国ドラマ「宮廷女官 チャングムの誓い(大長今)」では、朝鮮時代の王様に出された宮廷料理が様々な場面で登場するが、この時の水刺床(スサラン)は文献によれば、白米、赤飯の2種のご飯に3種のキムチ。味噌味とアミの塩辛味の2種のチゲ。そして食材と調理法が重複しない12品の料理が並んだと書かれている。
これは献上された多品目の食材の質や量で民の生活する状況を判断する為であったという説と、薬食同源、陰陽五行説の考えに基づき宮廷内の人々の心身の健康維持のために季節の多種類の食材からまんべんなく栄養を摂取出来るようにという説がある。
王の食事の様に毎食12品ものおかずを用意するのは難しいが、多くの韓国料理にみられる様に多種類の野菜と肉・魚介類とを合わせて調理することで、おいしさと健康の両方を毎日の生活に取り入れて欲しい。
たかね けいこ 料理研究家。韓国などさまざまな国の料理を研究し、実際に調理。著書に「食べて治そう!たのしくおいしい朝鮮料理」(わらび書房)
◇雑菜(チャプチェ)◇
喜びの集まりでも悲しみの集まりでも、人々が集まる時は必ず作られるチャプチェ。きっと家庭ごとに「ウチのチャプチェ」に欠かせない食材がある事でしょう。今回のポイントは色。栄養バランスも良い一品です。
【材料:2人分】
牛薄切り肉(もも、肩ロースなど) 120㌘
砂糖 大さじ1 9㌘
しょう油 大さじ2 36㌘
おろしニンニク 少々
ごま油 少々
たまねぎ 1/4個 (50㌘)
生しいたけ 2枚 (25㌘)
ズッキーニ(緑) 1/4本 (50㌘)
パプリカ(赤かオレンジ) 1/4個 (40㌘)
韓国春雨 40㌘
ごま油、すりごま、塩、こしょう 少々
【作り方】
①牛薄切り肉は細切りにし、砂糖、しょう油、おろしニンニクをもみ込み、ごま油をひいた鍋で炒り肉に火を通す。
②韓国春雨はたっぷりの熱湯に入れて戻し、2~3分したら箸でよくほぐしてすっかり芯がなくなるまで戻す。流水で冷やしざるにあげて水気を良く切り、食べやすい長さに切る。ボールに入れて炒めておいた牛肉を肉汁ごと入れて、よく混ぜておく。
③たまねぎ、生しいたけ、ズッキーニ、パプリカは千切りにする。フライパンを熱し、ごま油をひいてたまねぎから順に炒める。火が通ったら順次、牛肉と春雨の入ったボールに入れて混ぜる。
④すべての材料が混ざったらすりごま、塩、こしょうで味を整える。
【調理のポイント】
日本や中国では緑豆でんぷんから作った白くて細い春雨が多いですが、韓国料理にはぜひ韓国産のサツマイモでんぷんからつくられた灰色でしっかり太い春雨を使って下さい。モチッとしっかりした食感で時間がたってもおいしいです。