韓国の次代を担う若手ピアニストとして注目を集めるイム・ドンミンとソン・ヨルムが、相次いで来日公演を行い好評を博した。2人の横顔を紹介する。
◇卓越した技巧と情熱 イム・ドンミンさん◇
横浜、東京でこのほど行った初来日リサイタルで、オール・ショパン・プログラムを披露。「偉大な作曲家であり、私が最も敬愛する存在」というショパンのバラード第3番、そして大好きなピアノソナタ第3番を演奏し絶賛を浴びた。終了後のサイン会も大盛況で、ファンクラブへの申込者も急増している。
「日本の聴衆のあたたかい拍手がうれしかった。ピアノの練習は1日8時間。音楽漬けの毎日だ。ずっとロシア人ピアニストに習ってきたが、その厳しさがピアニストとしての自覚を持たせてくれた」
幼いころからピアノを学び、父親の転勤に伴い13歳でモスクワに渡った。2002年のチャイコフスキー・コンクールではチョン・ミョンフン以来2人目の韓国人入賞者となり、2004年に行われたプラハの春国際音楽コンクールでは第2位に入賞し、一躍世界の注目を集めた。
2002年のロン=ティボー国際コンクールで優勝し、一足早く日本デビューを果たした弟のイム・ドンヒョクとともに、将来を期待される。
2002年11月にロンドンで初リサイタルを成功させ、その後、世界各地で演奏を重ねてきた。現在はドイツ・ハノーファー音楽芸術大学に在籍し、クライネフ教授のもとで学ぶ。
そのクライネフ教授は、「卓越した技巧、炎々たる情熱を持ち合わせ、その音のパレットの上には実に様々な色彩が並んでいる。21世紀の楽壇に名を連ねる傑出したピアニストになるだろう」と、大きな期待を寄せている。
「学ぶことは、まだまだたくさんある。音楽を一生の仕事として努力を重ね、聴衆に常に満足してもらう演奏を心がけたい」
11日に再来日し、神奈川フィルと共演する。
◇深い音楽性持つ19歳 ソン・ヨルムさん◇
19歳にして深い音楽性と大きなスケール、しっかりとしたテクニックを持ち、韓国のみならず世界的な新進ピアニストとして注目を集める。このほど開かれた東京フィルハーモニー交響楽団に招かれての公演でも、大作ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を見事に演奏し、日本のクラシックファンをうならせた。
「日本では大阪、東京を中心に8回ほど演奏した。隣国なのに遠く感じることもあった日本だが、公演をすることで親近感を感じている。お客さんが温かく迎えてくれるのも嬉しく思う。今後さらに音楽交流が進めばと思う。私のみならず(韓国の)若い世代が活躍しているのはうれしいし、多くの演奏家が海外で活躍することにより、韓国の知名度も上がるのでいいことだと思う」
5歳でピアノを習い、周囲が驚く上達ぶりを見せる。98年7月、錦湖文化財団(朴晟容理事長)の英才発掘及び支援プログラムである錦湖英才コンサートに出演し、ピアニストとしての活動を始めた。16歳の時に英才として首席入学した韓国芸術総合学校で金大鎮教授の指導を受け、現在に至っている。
「「ピアノは、一人で演奏しても華やかに奏でられる。まさに『楽器の王様』の名にふさわしい。練習時間は特に決まっていないが、平均8時間ほど。好きな作曲家はモーツァルト。人間が作曲したものというより、神がモーツァルトに書かせた神聖な音楽のように感じるロシアのプロコフィエフやチャイコフスキーの曲も、韓国人の心情と通じるものを感じる」
来日直前に朴晟容・理事長の訃報にふれた。
「本当の祖父のように支えてくれた方であり、韓国音楽界にとっても大切な方だった。非常に悲しくて何も手がつかなかった。いまも信じられない思いでいる。会長の教えを胸に、人の心に響く音楽を奏でるピアニストに一日も早くなりたい」