東京フィルハーモニー交響楽団が5月11日、韓国・釜山の釜山文化会館で公演を行った。韓日友情年の記念企画で、2003年に続いての韓国での演奏会だ。同交響楽団広報課の松田亜有子さんに報告をお願いした。
日本の歴史教科書問題や竹島(独島)の帰属などで日韓関係が揺れ、多くの韓日文化交流が中止か延期になるなどの逆風の中、一時は開催を危ぶむ声もあった。
しかし、「何度も検討を重ねたが、文化交流は大切であり、韓日の音楽交流を発展させたい」という主催者である釜山放送の熱意によって、無事に開催にこぎつけたことは大きな喜びだった。
「釜山は韓国第2の都市だが、ソウルで世界的に有名な音楽家の演奏会の機会は少ない。釜山放送開局10周年を記念して釜山の文化水準を高めたい」(朴綉函Τ・格錞・卍后砲箸いΔ里・契舛瞭圧,箸里海箸世辰拭」
釜山シンフォニー常任指揮者のオ・チュングン指揮、日本オペラ振興会の高橋薫子がソプラノ、ヴァイオリンを金ドンウク、そして演奏東京フィルという韓日合同チームが奏でるチャイコフスキーやヴェルディの名曲に、約1200人の聴衆は大きな拍手を寄せてくれた。
韓国の指揮者とソリストに日本の歌手とオーケストラが一体となったオーケストラ公演は、最後のアリラン(編曲は北朝鮮の作曲家、指揮者は韓国、オーケストラは日本)の演奏で、会場で涙を流す方もいたことに象徴されるように、感動を共有し、一体感が全てを支配した。
舞台と客席が一体となった会場は、「こんな時こそ韓日の音楽家が純粋に音楽を創り上げることが重要だ」という言葉が、まさに正しかったことを証明するものとなった。
在釜山日本総領事館の池田領事は、「釜山にあたたかい風が流れてきました。大変高いチケット代金(日本円で1万5000円)にもかかわらず、これだけ大勢の人が来てくれたのは大成功。友情年の企画として本当に素晴らしい」との感想を述べられた。
ヴァイオリニストの金ドンウクさんは、「音楽は世界共通の言語。政治的に難しいことがあっても、それを乗り越えることが出来ると信じる」と語ってくれた。
韓国と日本の不幸な歴史、そして現在に続く問題を、音楽の力が洗い流してくれればと、東フィルメンバー全員が感じることの出来た公演だった。
翌日の釜山日報が、「文化の力でこぎ出していけば玄界灘の波も高くない。東京フィルの演奏の見事さ、そして新しいスター誕生を予見させる指揮者のオ・チュングンの力量にも注目したい」と批評してくれたことも付け加えておきたい。
◆東京フィルハーモニー交響楽団
2001年から、韓国出身の世界的指揮者・鄭明勲がスペシャル・アーティスティック・アドヴァイザーを務め、同楽団の音楽の質と人気を飛躍的に高め、毎公演とも満席という人気を誇っている。韓国人ソリストを招いた公演も数多く実現するなど、韓国との関係を強め、その縁で2003年11月、初の韓国公演(鄭明勲指揮)が実現した。今回は2度目の訪韓公演になる。今年の11月に3度目となる韓国5都市公演(鄭明勲指揮)を行う。