ここから本文です

2006/11/17

<韓国文化>高度な表現力で人気上昇

  • bunka_061117.jpg

          アジアオーケストラウィークに出演したジュディ・カン

 海外で活躍する韓国系音楽家が目立つようになった。先ごろ日本で行われたアジアオーケストラウィークにはカナダ系韓国人のジュディ・カンが出演し好評を博した。インタビューを紹介する。

 カナダのヴァイオリン界の期待の星と呼ばれるジュディ・カンは、韓国人移民の2世だ。両親が早くに離婚して、母と祖母に育てられた。2人とも音楽好きで、その影響で小さいときからヴァイオリンの英才教育を受けてきた。当時教えてもらったのは日本人の先生だったという。

 すぐに才能を認められて、4歳ですでにソロ演奏を経験。5歳で最初に出たコンクールで優勝して以来、若い演奏家のためのCBCコンクールで優勝、最優秀解釈賞を受賞。10歳でナショナル・アーツ・センターとの共演でクラシック音楽界にデビューした。

 当時、演奏を聴いたオタワ市民から、「今夜スターがいるとしたら、それはジュディ・カンだ。無類の才能に恵まれ、彼女は楽器を自由自在に扱っている」と評された。

 11歳でカーティス音楽院に奨学金を得て入学、最年少の17歳で卒業。音楽学士号を取得した。同様に奨学金を得てジュリアード音楽院で修士号を取得、マンハッタン音楽学校でアーティスト・デイプロマを取得した。

 カナダ音楽コンクールで数度優勝、ニールセン、クライスラー、ナームバーグなどの国際ヴァイオリン・コンクールでも高位入賞している。

 プロのヴァイオリニストとしての道を幼いときから歩んできたが、「プロとしてのプレッシャーはなかった。それよりも練習を積み重ねて上達することが、数倍大変」

 これまでトロント交響楽団、モントリオール室内管弦楽団、オタワ交響楽団などと共演、9年ほど前からは韓国の釜山フィルハーモニー管弦楽団、韓国室内アンサンブルなどと共演。以後毎年1~2回は韓国で演奏している。カナダと韓国の政府行事に呼ばれ、クリントン元米国大統領、盧武鉉大統領、各国大使などの前で演奏した経験も持つ。

 「カナダ系韓国人という立場が、韓国とカナダの友好に役立てば、こんなうれしいことはない。韓国での演奏会が増えることも光栄だ。自己のルーツを確認する機会にもなった。韓国と自分が近くなっているのを毎年感じている」

 カナダは英語とフランス語が公用語。多民族国家を反映してか、人口の18%がバイリンガルだ。彼女も祖母が韓国語しか話せなかったので、家の中では韓国語と英語の二重生活をしていた。そのため、韓国語も会話程度なら話せるという。

 「日本には在日コリアンが大勢生活していると聞いた。同じ海外で生活する2、3世のコリアンとして、機会があれば経験を分かち合ってみたい。自分が何者であるかはずっと考えてきた。カナダの中でもアジア人の多い地域で暮らしているので、その点はよかった。現在はニューヨークに住んでいるが、ここも多民族の街でコリアンも多い。アイデンティティとは何か、折に触れ考えている」

 日本での演奏会では、モーツアルトのヴァイオリン協奏曲第4番を披露した。その表現豊かな演奏に、観客の拍手が鳴りやまなかった。

 「日本での演奏会は2度目だが、ソロで演奏するのは初めて。日本の聴衆は礼儀正しくレベルが高いので、とても幸せな体験だった」

 使用しているヴァイオリンはガリアーノ。1740年制作で世界に250丁しかない。カナダ政府から無期限貸与されている名器だ。

 「ヴァイオリンは、とても女性的な楽器だと思う。私は控え目な性格だが、ステージではとても開放的で、ヴァイオリンを使って聴衆と会話ができる。ガリアーノは輝くような明るく、甘い音色を出す。これを使えることはとても光栄だし、カナダ政府に感謝している。今後も恥じない演奏をしていきたい」


  ジュディ・カン 1979年カナダ生まれ。CBC(カナダ国営放送)の若い演奏家のためのコンクールで優勝。ジュリアード音楽院で修士号を取得。今年10月アジアオーケストラウィークに出演。CBCから2枚のCDをリリース。