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2006/11/10

<韓国文化>父と娘の愛憎描く

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    映画『ファミリー』の一場面から

 父と娘の愛情と葛藤(かっとう)をテーマにした韓国映画『ファミリー』が、12月2日から全国公開される。韓国で200万人を泣かせた話題作だ。来日したイ・ジョンチョル監督に話を聞いた。

 ――初の長編映画ということだが。

 俳優には一人一人違った長所短所があるので、それぞれの良い点を引き出すところに気を使った。絵コンテを書くのを先延ばしにしても、俳優とのコミュニケーションをとることを優先した。話をしながら彼らの隠されている魅力をどのように引き出すかに力をいれた。

 ――苦労した点は?

 新人俳優と新人監督で経験不足のため、低予算の中で作品を作り上げることに苦労した。もっと経験があればもっといいものが作れたと後悔する部分もあった。

 具体的には、娘が和解のために父親を訪れるシーン。本来は撮影の後半で撮るべきだったが、クランクイン間もない頃に撮影してしまったので、あとで全体を見たときそのシーンだけ違和感が残ってしまった。

 ――なぜ家族愛をテーマに選んだのか?

 知り合いの女性が大学入試に失敗し、予備校に通うための費用を父にもらったが、父が病気だったので、そのお金を使って内緒で会計専門学校に通い、会社勤めを始めた。

 そして、初めて貰った給料を病気の父のところへ持って行き、驚かせようとしたところ、本作に出てくるチュソク(父)のように厳格な父は、大学に通わなかったことにとても怒り、厳しい対応をした。

 しかし、その父が亡くなった後、実はすごく喜んでいたことを、人づてにその女性は聞いた。そういう素直になれない「父と娘」の関係について描きたいと思った。

 ――娘役に若手女優のスエを選んだ理由は?

 彼女が出演した「ラブレター」というドラマを見て、その雰囲気、演技力に感心した。娘と父の心のすれ違い、誤解、葛藤(かっとう)を表現するのは、彼女しかいないと思った。

 ――韓国では口コミなどで200万人を動員した。映画の魅力は何だと考えているか?

 初めは単調な展開だが、途中からテンポが早くなり、感情移入しやすくなることだと思う。

 自分の父親と重ねてみた女性の多かったことが、観客の支持を得た一番の理由だと思う。日本や在日の観客にも、共感を持って見てもらえればと願っている。


  イ・ジョンチョル 1969年生まれ。漢陽大学演劇映画科卒業。短編映画の監督などを経て、『ファミリー』で長編映画デビュー。

◆脚本を読んで感動  主演のスエさん◆

 私が演じたジョンウンは刑務所から出所してきたばかりの女性で、父親との仲がうまくいっていない。男勝りなところがある強い女性だが、同時にとても純粋な心を持っていて父親のことを長い間ずっと誤解していて、反発してきた。脚本を読んでとても感動し、特別な作品だと直感した。

 ジョンウンのような女性は、私自身ともかけ離れているし、周囲にも見当たらないので、最初はうまく演じられるかどうか、とても不安に感じていた。でも撮影が進むうちに、自分がだんだんジョンウンになっていくのを感じた。

 監督はとても優しい方で、演技の面など多くのことを教わった。監督自身がとても演技の上手な方で、この場面ではどういう感情があって、どんな演技をすればいいのか、演じてみせてくれた。

■あらすじ■

 3年の刑期を終えて娘・ジョンウンは年老いた父・チュソクと幼い弟・ジョンファンが暮らす家に戻ってきた。しかし、父親が投げかけた最初の言葉は、「なぜ帰った?いつ出ていくんだ?」だった。あくまで厳格にしか接することが出来ない父と、父を疎ましく思う娘。だが、父が白血病に冒され、死期が迫っていることを知ったジョンウンは…。