韓国で2005年8月に公開され、800万人動員の大ヒットを記録した映画『トンマッコルへようこそ』が、28日から全国公開される。韓国戦争を時代背景に、トンマッコルという村に南北の兵士が紛れ込むことから起きた事件を描いている。来日した朴光鉉監督に話を聞いた。
――この映画を思いついたのは。
原作は元々、プロデューサーを担当したチャン・ジン氏が演劇のために書いた脚本で、チャン氏から映画化を勧められた。原作に込められた平和へのメッセージ、自然な人間らしい生活を送る村人の姿がとても魅力的なので、映画化に乗り出すことにした。
韓国でこれまで制作された戦争映画は、戦争の悲惨さとか、共産軍との激しい戦いとかが多かった。私は戦争がなかったら人々がどれだけ幸せに暮らせるかというメッセージを伝えたかった。
映画がヒットするかどうかまったくわからなかったが、どんな戦争でも戦争は良くないということ、そして平和への思いを伝えるためにも、何とかヒットしてほしいとは思っていた。
映画のメッセージ性、それとエンタテインメント的な要素を数多く盛り込んで映画を作ったが、その2つが観客に受け入れられた要因だと思う。
――初監督作品と聞いたが。
コマーシャルフィルムや短編映画の制作経験はあったが、長編映画は今回が初めてだった。私だけでなく多くのスタッフが長編映画の制作は初めてだった。
初体験だからこそ情熱を持って映画化に取り組くむことができた。また、映画は韓国戦争が舞台で、私たちが生まれる前の話だから、資料準備に長い時間をかけた。それらが良い結果を生んだのだろう。
――映画化にあたり苦労したのは。
物語の設定をどうすれば信ぴょう性のあるものに出来るか悩んだ。韓国戦争が起こったことも知らない村が存在することさえ信じられないことだし、さらにその村で韓国軍、人民軍、連合軍の兵士が出会う確立もゼロに等しいことだ。
そのためファンタジー的な要素を取り入れ、神秘的な村の雰囲気を出した。韓国ではファンタジーは根付かないと言われていたので冒険だった。
――音楽を日本の久石譲さんに依頼しているが。
撮影準備をしているときから、この映画には久石譲さん以外の音楽は考えられないと思っていた。「人との和合」をテーマにした音楽34曲を完成させてくれた。とても感謝している。
――映画で描かれた南北分断の厳しい現実は、今も続いているが。監督はどう考えているか。
半世紀以上前に生じた南北分断という現実が、今の若い世代の生活にも影響しているのは、とても不条理だ。権力や利己主義でなく、人間愛や思いやり、やさしさでこの問題を解決していかなくてはならない。日本や在日の映画ファンとも、その思いを共有できればと願っている。
■あらすじ■ タイトルのトンマッコルは、江原道の山奥に存在するという架空の村の名前。舞台は1950年代、人々はいつも笑顔で暮らし、自給自足、争うことのない生活を送っていた。このユートピアのような村”トンマッコル”に連合軍、韓国軍、人民軍の3組の兵士たちが迷い込む。殺気立って争う兵士たちも、いつしか村人たちに心を開いていくが、村には危機が近づいていた。
パク・クァンヒョン 1969年生まれ。CM監督として7年間活動語、オムニバス映画『ムッチマ・ファミリー』の第2話「僕のナイキ」で映画監督デビュー。長編初監督作となる本作で大韓民国映画大賞の監督賞、新人監督賞、脚本賞(チャン・ジン、キム・ジュンと共同)を受賞。