オーケストラから見えるアジアの”今”と”未来”をテーマにした「アジアオーケストラウィーク2006」が、来月2日から東京・大阪で始まる。5年目を迎える今年は、韓国、日本、中国、オーストラリアの4楽団を迎えて開かれる。日本オーケストラ連盟常務理事・事務局長の岡山尚幹(おかやま・なおもと)さんに、5年間で果たした役割などについて寄稿してもらった。
2002年から毎年10月に芸術の秋に先駆けて、日本の文化庁主催の「文化庁舞台芸術国際フェスティバル」が開かれている。そこに韓国のオーケストラが招かれている。
この国際フェスティバルの目玉ともいえる「アジア・オーケストラ・ウィーク」に、アジア・太平洋地域から3ないし6のオーケストラが招待され、東京と大阪で演奏を披露しているが、中でも韓国と中国はその活動が活発で、毎年代表的なオーケストラが招かれてきた。
これまでにプチョン・フィルハーモニック管弦楽団(02年)、スウォン・フィルハーモニック管弦楽団(03年)、ソウル・フィルハーモニック管弦楽団(04年)、デジョン・フィルハ-モニック管弦楽団(05年)、そして今年の韓国交響楽団と5楽団になり、そのいずれもが初来日である。彼らのコンサートホールを満たす圧倒的な熱演は聴衆の大喝采を浴び、日本の音楽界は韓国のオーケストラのレベルの高さを知ることとなった。
アジアに西洋音楽が紹介され、それを学び、親しみ始めてからもう100年以上が経った。近年の経済発展とともに、アジア各国におけるオーケストラの活動は急速に発展してきているのだ。
また、それぞれの国から国際コンクールで入賞する優秀なピアニストやヴァイオリニストが年々誕生、さらにその国の現代のオーケストラ作品も数多く作曲され海外のオーケストラによって紹介されるようになった。今やもう海外のオーケストラによる演奏だけを有り難がる時代ではなくなっているのだ。
私はこの事実を、5年間の「アジア・オーケストラ・ウィーク」を通じてはっきりと確信するようになった。
韓国の、というより今や世界中で活躍する指揮者チョン・ミョンフン氏のオーケストラ演奏に感動した方は数え切れないと思う。氏の演奏会は常に売り切れ状態であり、コンサート終了時、大喝采はいつも延々と続く。
聴衆は彼の誠実で力あふれる演奏にほんとうに感動する。そこには有名なドイツの、或いはロシアの作品を上手に演奏しているから喝采を送るのではなく、彼の指揮に納得し、心を合わせて演奏される「今の彼の音楽」に心を動かされているからではないだろうか。
韓国の若い演奏家についても同じことが言える。2003年にこのフェスティバルに出演、スウォン・フィルハーモニックと協演したピアニスト、ソン・ヨルムさんもその一人。
当時日本で全く知られていなかった彼女だが、この時の素晴らしい演奏で一躍知られるところとなり、その後ニューヨーク・フィルとの協演などを含め海外で大いに認められ活躍している。
同様に今年韓国交響楽団と協演予定のヴァイオリニスト、ジュディ・カンさんも大いに期待されている。
今回、朴泰永(パク・テヨン)の指揮で来日する韓国交響楽団は、韓国初の自主運営のオーケストラ(今までのオーケストラは全て「市」の運営)。進取の気性に富み、ヴァラエティ豊かなレパートリーと兼ね備えた実力でいま最も注目のオーケストラである。
今年は韓国交響楽団の他に、中国からはハルビン・黒龍江交響楽団、オーストラリアからは名門シドニー交響楽団、そして東京公演のみになるが、舞台芸術国際フェスティバルオーケストラの名のもとに日本のオーケストラも参加する。
10月2日の東京オペラシティコンサートホールを皮切りに東京と大阪で連日、それぞれ個性あふれる熱い演奏が展開されることは間違いなく、楽しみながらアジアの文化の現況を知る絶好の機会となる。
ぜひ多くの皆さんに会場に足を運んでもらいたいと願っている。
■アジアオーケストラウィーク2006■
★シドニー交響楽団 10月2日(東京)
10月4日(大阪)
★韓国交響楽団 10月3日(東京)
10月5日(大阪)
★ハルビン・黒竜江交響楽団 10月4日(東京)
10月6日(大阪)
★舞台芸術国際オーケストラ 10月5日(東京)
*東京公演は東京オペラシティコンサートホール、 大阪はザ・シンフォニーホールでいずれも午後7時開演。
料金:1,000~3,000円。セット券あり。
℡03・5610・7275(日本オーケストラ連盟)