韓国文化院主催の講演会「韓国の生活に息づく薬食同源の思想」がこのほど、都内で行われた。曺基湖(チョ・ギホ)・慶熙大学韓医学教授の講演概要を紹介する。
中国では昔から「食」を重視してきた。紀元前千年頃の周の時代の宮廷の医療は、食医、疾医(内科)、瘍医(外科医)、獣医となっていた。
最上位の食は、王の体調に合わせて食材を選び、料理を作る。中国のことわざに「財を得んと欲すれば働かなければならない、そのためには健康であることが大切、それには食べなければならない」とある。中国の食の思想の中に「医食同源」がある。「医と食とは根本的に同一、つまり食べ物は常に薬である」の意である。
医食同源の食事とは「バランスのとれたおいしい食事」のことだ。バランスの2つの意味は、栄養のバランスをとる、陰陽のバランスをとる。
中国最古の医学書『皇帝内経』には、「五穀を養とし、五果を助とし、五畜を益とし、五菜を充とする、気味を合わせてこれを食すれば、精を補い、気を増す」とある。五穀、五果、五畜、五菜をとれば、栄養のバランスがとれる。気とは食物の持つ性質を示し、寒と熱に分けられる。寒と熱とは、相対立するものだが、両者をバランスよくとることによって、健康維持を図ることができる。
薬を食べ物として、食べ物を薬としてみなしたのは非常に優れている健康法。食べ物は薬を飲むように大事に摂り、薬は食べ物のように気軽く摂るものであるという習慣がつくようになる。
漢方薬の効果は四気五味という独特な気味論で説明される。四気とは、熱=体を温める作用が強い。温=体を温める作用がある。平=温めも冷やしもしない。涼=体を冷やす作用がある。寒=体を冷やす作用が強い。
次に漢方でいう薬の概念を見る。現代医薬品・漢方薬(下品・中品・上品)・食品(機能性食品・通常食品)となる。
上薬は食品にも近く、下薬は現代医薬品に近い。漢方でいう薬の概念は現代薬学の概念より広いことがわかる。
韓国では普通の食べ物でも漢方薬を混ぜる。例を挙げると夏は、汗をかき(気虚)、冷たい飲み物を飲む(腸冷)ために、韓国人は「以熱治熱」として人参と黄耆と鶏を煮込んだ料理で、滋養強壮剤として最高の組み合わせである参鶏湯(サムゲタン)を好んで食す。
韓日の緑茶のつくり方を見ると、日本は蒸すのに対し、韓国では煎る。なぜなら緑茶の性が冷であるから煎って冷性を中和させるのである。冷たいものに熱を加えることによって陰陽のバランスをとる。
キムチの中には生姜、棗(ナツメ)等が入っていて、薬食同源の概念が反映している。世界5大健康食品の中でもキムチがマルチ栄養素ということができる。
参考までに世界5大の健康食品をあげると、韓国=キムチ(マルチ栄養素)、日本=大豆、インド=レンズ豆、スペイン=オリーブ油、ギリシャ=ヨーグルトとなる。
韓国の薬食同源の思想を知るには東医宝鑑(とういほうがん)がある。朝鮮時代の医書として23編25巻に構成。著者は許浚。1613年に刊行、朝鮮第一の医書として評価が高く、中国・日本を含めて広く流布。日本においては、享保9年(1724年)に日本版が刊行。寛成11年(1799年)にも再販本が刊行。中国においては、乾隆28年(1763年)に乾隆版本が刊行。光緒16年(1890年)に日本再販本をもととした。
編纂の背景として、朝鮮医学は忘れ去られて、薬までも全て中国に依存する状況だった。しかし、明医学では朝鮮半島固有の環境・病理に適さない部分があった。明医学を基礎とし従来の朝鮮医学との統合作業の必要があった。
以前の医書との差異は理論より実用性を重んじている。国土から産出する郷薬の重要性を強調している点。現在も多くの人々が体に良い飲み物として韓国から産出される薬剤を用いた健康茶を楽しんでいる。一つの薬物で治療できる効果を並べる。これが薬物学として民間療法及び薬食同源に発達した。
お粥は水分が多く、少量でお腹が満たされ、しかも完全消化をし、米と具との調和が見事な栄養食。生活習慣病や肥満防止、美容、滋養によく、少量で燃焼させるむりのない食べ物で、特に過食気味の現代人にとって、朝のお粥は正に薬膳。お粥の習慣は元々日本と香港の朝食として知られている。最近、韓国では忙しいサラリーマンと学生の便利な栄養食としてお粥がブームである。
正食・・正しい食習慣
正動・・適当な運動
正息・・正しい呼吸法
正眠・・快適な睡眠
正心・・肯定的な思考
健康を失うには3つの理由がある。一番目はするべきことをしないからである。二番目はしてはいけないことをするからである。三番目はやることはやるがまともにしないからである。
☆夏バテ防止策として、食前酒(高麗人参酒)→ 主料理(参鶏湯)→ デザート(五味子の花菜)が良い。