ここから本文です

2006/06/30

<韓国文化>朝鮮朝舞台にシェークスピア劇

  • bunka_060630.jpg

    海外でも評価の高い木花の代表作

  • bunka_060630-1.JPG

    シェークスピアの原作に韓国舞踊やマダン劇を取り入れた

 韓国の戯曲家・演出家の呉泰錫(オ・テソク)氏率いる劇団「木花」の日本公演『ロミオとジュリエット』が7月中旬、埼玉、東京、福岡で行われる。韓国演劇界をリードする呉氏に、日本公演について話を聞いた。

 呉泰錫氏は韓国演劇界の父と呼ばれ、80年代から今日に至るまで、常に韓国演劇をリードしてきた。韓国戦争、国家分断、民主化と動乱の時代を生きた辛らつな批評眼。そして限りない愛着を持つ自国の言語、民俗文化、伝統芸能の現代化。呉氏の演劇の特徴であるこの二つは、韓国現代演劇の独自の方向性と可能性を示唆している。その自由奔放な想像力と実験的な舞台演出で、これまで朝鮮日報文学賞、東亜演劇賞、湖巌賞の受賞に輝き、05年には韓国文化功労賞を授与された。唐十郎や青年団の平田オリザ、新宿梁山泊の金守珍、井上ひさしなど日本の演劇人との交流も深い。

 今回、日本で上演する『ロミオとジュリエット』は、木花の代表作の一つ。95年に初演され、2001年にはドイツ・ブレーメンのシェークスピア・フェスティバルに招聘、海外の批評家からも絶賛を浴びた。

 05年10月、06年5月に韓国国立劇場をはじめ韓国各地で再演、今年11月には英ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのロンドンの本拠地でもあったバービガン・センターでの招聘が決定している。

 舞台を韓国の朝鮮朝時代に移し、荘園領主の家同士の抗争を背景に、韓国の舞踊やマダンなどを巧みに取り入れながら、初々しい若者の恋と悲劇の終焉を描く。

 二人の死の浄化にもかかわらず、憎しみの増殖で血塗られた死の祝祭というラストシーンは、憎悪が連鎖する世界情勢への警鐘となっている。

◆“憎しみの連鎖”終わらせたい 呉泰錫氏◆

 朝鮮朝を舞台にしたのは、観客にロミオとジュリエットというよりも、自分たちにより近い国、隣村の話として見てもらいたかったからだ。伝統舞踊や衣装を取り入れたのも同じ考えだ。

 憎しみの連鎖で終わる結末は、観客にこれではいけないという認識を伝えたいためだ。なぜ罪もない若い恋人達が死ななければならないのか、それを観客に考えてもらえればと思っている。原作のセリフは、これはという大切な部分は残しているが、後は翻案している。

 シェークスピアは演劇に携わる者なら一度は吸わなければならない酸素のようなものだ。ソウルで1カ月ほど前にシェークスピアフェスティバルが行われたが、そのオープニングで上演した。

 今回メンバー32人が全員来日するので、ソウルとまったく同じ舞台を日本の観客に見せることができる。特にロミオとジュリエットが美男美女でなく、どこにでもいる普通の男女であることに注目してほしい。

 日本では80年に初めて演劇の上演を行った。以後今日まで10回以上公演している。そして私の父が早稲田大学法学部出身ということもあり、日本にはとても親しみを感じている。日本や在日の演劇人との付き合いも深い。演劇とは人の心を開くものだ。韓日の演劇交流を通じて国民同士の心を開くことができたらとも願っている。

<埼玉公演>
日時 7月14日午後7時開演
場所 富士見市民文化会館きらり☆ふじみ、℡049・268・7788
<東京公演>
日時 7月16日午後4時・7時開演、17日午後3時開演
場所 シアターX(カイ)、℡03・3275・0220(魁文舎)
<福岡公演>
日時 7月21日午後7時開演、22日午後1時・5時開演
場所 北九州芸術劇場、℡093・562・2655

◆プレゼント◆

 16日午後4時の回に2組4人をご招待。住所、氏名、年齢、職業、希望プレゼント名、本紙の感想を明記の上、東京本社・読者プレゼント係まで。締め切り7月7日。