世界で活躍する韓国人音楽家が増え、日本公演に出演する音楽家も数多く見られるようになった。ドイツのシュツットガルト歌劇場に所属し、今春日本公演を成功させたバスのアッティラ・ユン、今月24日に日本公演を計画しているヴァイオリニストのオ・ジュヨン、江副育英会の奨学金を受け、8月25日に同会のコンサートに出演するピアニストのイム・ドンヒョクの3人を紹介する。
◆在日音楽家と共演 オ・ジュヨン◆
韓国音楽界が大きな期待を寄せる若手ヴァイオリニスト。在日のピアニスト呉恵珠さんとともに24日、東京で「ヴァイオリン&ピアノ デュオコンサート」を開く。
「日本には熱心なクラシックファンが数多くいる。その人たちと東京で美しい音楽を共有できることを、心から楽しみにしている。演奏でいつも心がけているのは、聴衆の心や魂に触れることのできる演奏をするということ。音楽はそのためにこそ存在していると思っている。聴衆が幸せを感じる演奏を披露したい」
ヴァイオリンを習い始めたのは5歳のとき。父がヴァイオリンの教師で、その指導を受けて始めた。
94年、12歳で渡米し、2年後の96年、ニューヨークで開かれた「若手アーティスト国際コンクール」で優勝し、一躍注目を浴びる存在になった。その後、ロサンゼルスフィルと共演し、米国の主要都市で演奏を行う。さらにヨーロッパでの演奏、韓国6都市での公演などを成功させた。
「生まれてからずっと自分の周りに音楽があり、それを聴いて過ごしてきた(父が自分の生徒に自宅で音楽の指導をしていたため)。このような環境が、若いうちから音楽に慣れ親しむ大きな役割を果たしてくれたと思う。ヴァイオリンの音色、特にその低音から超高音に渡って唄うように流れるその音質に、いつも魅了されている。ヴァイオリンは人間が自然から与えられた楽器、つまり「歌声」に最も近い楽器。今後も努力を積み重ねて、常にいい演奏を行いたい」
◆日本のファン急増 イム・ドンヒョク◆
韓国ピアノ界の新星イム・ドンヒョクは昨年10月、世界で最も難しいといわれる「ショパン国際ピアノコンクール」で、ピアノ協奏曲第2番を見事に演奏し、聴衆の大拍手を浴びた。そして兄のイム・ドンミンとともに兄弟で3位入賞し、世界中の注目を浴びた。
「ショパンはとても好きな作曲家。満足のいく演奏ができたと思う」と振り返っている。ショパンの曲だけを集めたCDも、すでに発売している。
10代でモスクワ音楽院に入学。2001年12月、17歳のときにロン=ティボー国際音楽コンクールに出場、優勝を勝ち取った。世界的ピアニストのマルタ・アルゲリッチがその才能を高く評価するなど、「天才少年」として世界各国で演奏している。
2003年には、海外の音楽コンクールで審査に不公正があったとして、入賞を拒否する事件もあった。「音楽のステータスを守るためにも、不公正な決定に従うことは出来ない」と、意志の強い一面を見せている。
その高い音楽性に日本でもファンが急増している。現在は音楽家育成のための奨学金活動を行っている江副育英会の奨学生として、ドイツのハノーバー音楽院のソロ・クラスに在学している。
8月に都内で開かれる江副育英会第12回コンサートに出演、さらに成長した姿を日本のファンに見せる。
◆バイロイトの常連 アッティラ・ユン◆
躍進著しい韓国オペラ歌手の一人として、ヨーロッパ各地の歌劇場で活躍している。99年にシュツットガルト歌劇場のメンバーとなり、ワーグナーやヴェルディなど数多く歌っている。
バイロイトの常連であり、またサンフランシスコ・オペラでは「トゥーランドット」のティムール、「ドン・ジョヴァンニ」の棋士長など、最近ではミラノ・スカラ座に「さまよえるオランダ人」のダーラントで出演している。アッティラ・ユンは芸名で、好きなオペラであるヴェルディの「アッティラ」から取った。本名はチョン・スンヒョン。
中学生のときから合唱団で活躍していたが、声楽家を具体的に志したのは高校卒業の時。
「選択に間違いはなかった。歌手は私の天職だと思っている。オペラは総合芸術であり、オーケストラ、声楽家の歌声、演技、合唱、踊りなど、様々なものを客席から鑑賞できる。しかも声楽家や指揮者、演出家によって曲の解釈が異なる。それが更に魅力を作りだしている。それをぜひ感じ取ってほしい」
シュツットガルト歌劇場はドイツ有数のオペラ劇場で、ほぼ連日公演しても常に満席となるほど人気が高い。アジアやヨーロッパ各地からの公演依頼も多く、今春「魔笛」で待望の日本公演を果たした。
ユンはザラストロ役で出演、第2幕冒頭ではハングルで演説するという斬新な演出に臨んだ。
「国際会議の設定なのでハングルでやってみないかと演出家に言われ、やってみたら気に入ってもらえた。ただ時代背景を考慮して古い韓国語に訳したので、覚えるのが大変だった。日本のファンに楽しんでもらえてうれしい」。