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2007/10/12

<韓国文化>古代博多の壮大なアジア交流

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    鴻臚館南館東門推定復元図

 古代の外交施設であった鴻臚館(こうろかん)の発掘20周年記念特別展「古代の夢 鴻臚館とその時代」が、福岡市の福岡市博物館で28日まで開催中だ。同館についてのブルース・バートン桜林大学副学長の文章を紹介する。

 1987年末に、鴻臚館の跡が、当時の平和台球場の外野スタンドの下に見つかり、その後遺跡の発掘調査は継続的に行われ、現在に至る。鴻臚館跡からは、唐・宋時代の中国から輸入された陶磁器をはじめ、東は朝鮮半島の新羅から、西は現在のイランに当たるペルシアに至るまで、ユーラシア全域からの文物が出土している。鴻臚館の発掘に伴って、東西交流における博多の位置付け・役割は以前より明確になり、博多が昔から文化交流における重要なクロスロードであったという認識が(特に地元福岡で)高まった。

 また、アジア大陸に目を向けても、韓国の釜山、中国のニンポーやカントンをはじめ、歴史上、重要なクロスロードがいくつもある。面白いことに、これらすべてが博多と同様、港湾都市、つまり港町である。イメージとして、当時の東アジアは、陸上の国家同士とそれを隔てる海、つまり海域からなるもので、陸と海の接点に当たる港町が国際交流のもっとも重要な場になったと言えよう。博多もそうした港町の一つである。

 鴻臚館や博多遺跡群で出土したおびただしい量の舶来品を見ると、海外から大勢の商人が常に来ていたイメージを抱くが、これは数百年間の遺物が積み重なった結果であり、絶え間なく大勢の人たちが来ていたわけではない。文献記録を調べてみると、(記録に漏れがあるかもしれないということを考慮しても)平安時代に、日本に訪れていた外国船は、一年に一艘から数艘にすぎなかったのではないかと推定されている。したがって古代の国際交流とは、博多でさえ、量が比較的に少なく、ゆったりしたペースで行われていたと言える。

 これらの点を考え合わせると、北部九州のもう一つの面が見えてくる。「境界」としての役割である。「境界」とは物事の境目のことである。二つの文化圏を分ける文化的境界、二つの民族の居住地を区切る民族的境界など、さまざまなタイプがあるが、ここでは「国境」を中心に論じよう。

 (対馬を含む)北部九州およびその近海が日本の国境として機能し始めたのは、663年の白村江の戦いの直後からだと考えられる。敗戦を喫した大和朝廷のリーダーたちは、唐や新羅に対抗できる「国造り」の一貫として、北部九州に、大宰府という出先機関をつくり、その管理の下に、朝鮮式山城(大野城、基城など)と防人を中心とする国防システムや、鴻臚館の前身に当たる筑紫館を中心とする外国人客受け入れシステムを設けた。言い換えれば、北部九州を日本の正面玄関として設定した上で、その玄関に入ろうとする外国人をすべて国家の監視の対象として、受け入れたくない者を排除し、受け入れたい者を国家の管理の下で入国させるシステムをつくった。つまり日本の国境は政治的な判断で生まれたもので、最初から極めて人工的な性格を持っていたと言える。

 最後に「アイデンティティー」の問題がある。

 九州の住民や、時には国境の管理を任された大宰府の役人なども朝鮮半島や中国から来た人と触れ合う機会が増え、さまざまな関係が生まれた。その多くが、国家の立場から言えば、密輸や反逆の類いである。「国際交流」の一般的なイメージとは程遠いが、その評価は別として、こうした関係が生まれたのは、国境の両側に住む外国人同士が、共通した利害関心を持つことが多かったからである。対馬の住民にはもちろんのこと、博多の住民にとっても、奈良や京都より、釜山の方がある意味で身近な存在である。そうした関係から、「国」や「民族」に対する帰属感とは次元の異なる、境界に住む人間同士しか味わえない、一種の共通したアイデンティティーが生まれたのである。こうした外国や外国人に対するオープンさが、平安時代後期から急発展してきた博多という商業都市の原動力であり、現在の福岡市民、県民にも受け継がれていると言って良いであろう。

 鴻臚館の歴史的意義は、我々現代人に、歴史上の、もしくは現代の日本と世界との関係を考えさせてくれる点にある。鴻臚館の歴史は、「クロスロード」や、「境界」、「アイデンティティー」というふうに、世界史の大きなテーマと結びつくものである。北部九州の住民は歴史上、日本人としての自覚を持ちながら、「境界人」としての性格も備え、国境を跨ぐ交流の担い手となった。いわば二重のアイデンティティーに基づく彼らの開放的な姿勢に、今グローバル化の時代に生きている全ての日本人、いや全ての地球市民(グローバルシチズン)が、見習うべき点があるのではないか。(図録より抜粋して転載)


■古代の博多「鴻臚館とその時代」展■

日程:開催中(28日まで)
場所:福岡市博物館
料金:一般1,200円、高大生800円
℡:092・845・5011