韓国・日本・台湾の共同企画展「アジア陶磁デジタルプロジェクト じゃんけんぽんの考え方-勝ち負けのない共存」が、10月13日から12月16日まで岐阜県現代陶芸美術館で開かれる。アジア3地域の陶磁文化の相互理解と交流推進を目的にしたイベントである。
21世紀に入り東アジアの地域で、陶芸専門館が次々とオープンした。2000年台湾の台北県立鶯歌陶磁博物館、2001年韓国・京畿道に世界陶磁センター、2002年日本の岐阜県現代陶芸美術館である。
この3つの施設の共通点は、①地域を代表する窯業地に位置し、②窯業界の活性化を目的に設立され、③大型の国際的な公募展が開催されていることである。この3地域が、同じく窯業地の活性化を掲げている点に注目してみると、活性化しなければならない現状が共にあることがわかる。
次に国際的な公募展に注目してみると、先行しているのが、岐阜県多治見市で開催されている「国際陶磁器展美濃」である。86年に第1回を開催し、3年に1度のトリエンナーレ方式を採用、2005年に第7回を数えている。回を重ねるごとに「MINO」の名が世界中に知れわたることとなり、2002年には、専用の施設としてセラミックパークMINOが建設され、その2階部分に岐阜県現代陶芸美術館がオープンした。
2001年には韓国で「世界陶磁エキスポ」が開催された。2年に1回のビエンナーレ方式を採用、公募展のみならず、企画展、学術会議、ワークショップ、イベントなど多様多彩な企画がなされ、大人からこどもまでやきものに親しみ楽しむことができる。
台湾では2000年、鶯歌陶磁博物館の開館と同時に第6回台湾陶芸金賞が開かれている。同公募展は第5回まで国内作家を対象としていたが、博物館の開館にあわせて国際的な規模に拡大された。その流れを汲むのが2004年に開催された台湾国際陶芸ビエンナーレである。公募展の入選作品の展示とともに、受賞者のワークショップなど陶磁教育の普及を視野に入れている。
スタートの時期はやや異なってはいるが、東アジア地域でこのような施設ができたことは偶然ではない。この3地域では20世紀には外国の(特に西欧)現況を国内に紹介することで、やきもの芸術の飛躍的な発展が見られた。しかし、インターネットなどによる急速な情報の共有とグローバル化が進んだ現在、21世紀には異国の文化的刺激を受けるばかりでなく、それぞれが自身のアイデンティティを確認し、現在の様相を示す時期に来たといえる。
前出の3施設は、それぞれが文化交流協力協定を締結した。互いを知ることを第一歩として、近隣の似て非なる伝統文化芸術を尊重し共存すべきだと考え、地域における、やきものの現在地を紹介する巡回展を開催することにしたのである。
展覧会名の「じゃんけんぽんの考え方―勝ち負けのないの共存」は、李御寧さんの「ジャンケン文化論(新潮新書)」から着想されたもの。
じゃんけんは、日本でも、韓国でも、台湾でも、年齢、性別、貧富にとらわれず行うことのできる普遍的なコミュニケーションツールだ。二者択一により、勝負を決めるのではなく、三すくみの発想によるじゃんけんこそが、共存のキーワードとして有効ではあると考えられた。
近隣の存在を「やきもの」を通じて知る。そして巡回展による3施設からの発信は、アジア伝統芸術文化とアジアに根ざす補完関係のあり方を世界に示す機会になる。純粋な造形志向の作品、伝統的な技術による作品、食文化が反映された実用性のある作品、ライフスタイルの変化による伴うデザイン作品など、年齢、性別、志向にこだわらずやきものの混沌とした様相を紹介する。
作家の選出には、各地域とも、3施設のキュレーターがそれぞれの地域を訪れて、作家にインタビューし決定された。