戸栗美術館(東京都渋谷区松涛)で、「開館20周年記念 戸栗美術館名品展Ⅱ 中国・朝鮮陶磁」が開催中。朝鮮朝時代の陶磁など、同館所蔵の名品が一堂に展示された貴重な展示会だ。
戸栗美術館は、創始者・戸栗亨が長年に渡り蒐集してきた陶磁器を中心とする美術品を永久的に保存し、広く公開することを目的として、198711月21日に旧鍋島藩屋敷跡にあたる渋谷区松濤の地に開館した。
コレクションは伊万里、鍋島などの肥前磁器および中国・朝鮮などの東洋陶磁が主体となっている。収蔵品は現在約7000点で、日本でも数少ない陶磁器専門の美術館として知られている。
その収蔵品の中から名品を厳選して今年、開館20周年記念展を開いており、第2弾となる今回は、中国・朝鮮陶磁の名品を館蔵品の中から選りすぐった。
日本で初めて誕生した磁器の伊万里焼は、豊臣秀吉の朝鮮侵略で九州に連行された朝鮮人陶工の努力によって生まれたと伝えられている。
そのため韓半島の陶磁器は、日本陶磁のルーツとも言える。韓半島では中国の影響を受けて、9世紀頃後半から10世紀頃までに青磁を中心として磁器が焼かれはじめた。高麗時代(918~1392)の代表的陶磁である高麗青磁は、装飾的な技法と共に発展し、12世紀から13世紀にかけて最盛期をむかえて象嵌青磁などの優美な青磁が多数焼成された。
15世紀から16世紀には高麗青磁の伝統を受け継いだ陶器と磁器が並行して作られ、その中でも器面に白泥を塗って様々な装飾を施す紛青沙器などに優品が見られる。
この頃には白磁も本格的な生産が始められ、青花や鉄分の多い顔料で文様を描く鉄絵、銅を主成分とする顔料を使用する辰砂、釉裏紅などが発達し、余白を充分に生かした雅味あふれる作品が生み出されている。
世界の古代文明のひとつ、黄河文明発祥の地である中国では、紀元前5000年にはすでに土器が焼かれ、それ以降現在に至るまで常に技術向上を繰り返して素晴らしい陶磁器が数多く生み出された。新石器時代の文化を代表する土器である彩陶や灰陶は資料的価値も高く、その造形感覚もすばらしい。
土器から発展した中国の陶磁器は次第に洗練され多様性を帯びるようになる。漢時代の緑釉陶は青銅器に代わる副葬品として使われ、その後、唐時代には華やかな唐三彩や、なめらかで上質な白磁が盛んに作られた。
さらに宋時代は、やきものの黄金期とされ、青磁、白磁、天目茶碗などの様々な作品が、龍泉窯、耀州窯、定窯、磁州窯や景徳鎮窯などの名窯で生まれている。
元時代の13世紀後半には、陶磁史において画期的展開となった青花(日本でいう染付)が焼かれはじめた。その後の明、清時代の景徳鎮官窯による華麗な作品や、民窯による多様な装飾技法が施された作品に至るまで、中国陶磁は世界の陶磁器に影響を及ぼし続けた。
■戸栗美術館名品展「中国・朝鮮陶磁」■
日時:開催中(9月24日まで)
場所:戸栗美術館(東京・渋谷駅下車徒歩10分)
入場料:大人1,000円
℡03・3465・0070