「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2007」が7月14日から22日まで、埼玉県川口市のSKIPシティで開催される。デジタル映像文化を発展させるための映画祭で、今年が4年目。韓国からも多様な作品が出品されている。同映画祭ディレクターの瀧沢裕二さんに報告を寄せてもらった。
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭は、2004年に埼玉県川口市のSKIPシティで第1回が開催され、本年で4回目を迎える。SKIPとは、埼玉(Saitama)川口(Kawaguchi)インテリジェント(Intelligent)パーク(Park)の略で、埼玉県が中心となって行っている新産業拠点構想の総称であり、様々な施設群から成る新しい“街”である。
この映画祭の特徴は、大きく分けて3つある。まず、①撮影から編集までデジタルで制作された映画=「デジタルシネマ」のみを集め、デジタル上映する世界初の国際映画祭である。②次世代映像産業創出を目的としたSKIPシティプロジェクトを支えるものとして位置づける。③県民市民がその運営に深くかかわり、新しい映像文化の創出を図る、等である。この映画祭は、進化するデジタル技術の中に次世代映画の姿をいち早く模索し、単なる文化事業ではなく産業創出を目的としている。世界に対するSKIPシティプロジェクトの象徴として位置づけ、映画を「創る」、「観る」、「育てる」独自の文化を市民の中に醸成し、産業誘致、創出の基盤を作っていく、埼玉県と川口市の大いなるチャレンジ精神がこの映画祭を生み出したといえるだろう。
このようにして始まった映画祭だが、応募状況を見てみるとデジタルシネマの拡大振りがよくわかる。応募総数は、1回目144本(23カ国)、2回目458本(25カ国)、3回目584本(52カ国)と変化し、4回目となる今回は761本(69カ国)と驚異的な広がりを見せている。フルデジタルでの制作という厳しい条件化でのこの数字の推移は、映画制作におけるデジタル化が急速に進み、もはや標準化してきたことを意味している。撮影仕様は、初期は民生機のデジタルカメラやデジタルBカムといったSD仕様が多かったが、今年からは俄然HD仕様(高精細)の撮影が多く、特に国際長編部門ではHDカムでの撮影が主流となってきた。デジタル撮影機器及び編集等の周辺機器の驚異的進化と、それを使いこなす新しい力が確実に世界に育っていることがうかがえて頼もしく思えてくる。
韓国作品は、第1回国際短編コンペティション部門で、『カワードリー・ヴィシャス』(クワン・リー監督)が栄えある作品賞を受賞した。昨年の長編部門では、『オレのために泣くかアルゼンチンよ』(べ・ユンスク監督/韓国、アルゼンチン籍)が受賞こそ逃したが好評を博した(べ監督はこの後母国韓国に戻り、プロとしてのスタートを切られたと聞く)。中国と並び韓国映画人の若い力がSKIPシティでも注目を浴びてきているといえよう。
今年の応募作品の傾向は、子供を題材にしたり、主役にしたりといった映画が実に多かったことと、安価で高度なデジタル機器の開発と普及がハリウッドメジャーだけでなく、映画つくりの裾野にまで表現の多様化をもたらし始めたということであろうか。また、ジャンル別に言えばドキュメンタリーよりもドラマが充実してきており、実力派のプロの監督たちがデジタルでの撮影をこなし始めたともいえるのだろう。
Dシネマ(デジタルシネマ)という言葉に首をかしげていた映画人が多かった2003年当時に比べると、この言葉とジャンルはわずか4年で世界の標準となった感がある。その先駆的役割を果たしてきた当映画祭は、今後もデジタルシネマを介し、創る側と観る側の新しい関係を模索し、新たな文化の創出とそれに根ざした産業の創出を目指し、ドラスティックに変化し続けることだろう。
本年の第4回は、7月14日(土)から22日(日)まで開催される。南アフリカ、ボスニア、イスラエルといった世界から選りすぐりのデジタルシネマの祭典がもうすぐ幕を開ける。長編・短編コンペ部門のほか、世界の子供たちが制作した短編傑作選「特集上映カメラ・クレヨン」やシネマ歌舞伎など、今年も充実したプログラムをお届けする。
これからも次世代映像産業への寄与と新しい人材発掘を目指し、更なる試みを行っていきたい。
◆プレゼント
同映画祭の入場券(オープニング、クロージング、シネマ歌舞伎を除く)を10組20人に。住所、氏名、年齢、職業、電話番号、本紙の感想を明記の上、東京本社読者プレゼント係まで。
◆SKIPシティ国際Dシネマ映画祭
日程:7月14日~22日
場所:SKIPシティ
料金:前売り600円、当日800円
(シネマ歌舞伎は別料金)
℡:048・263・0818
*7月17日午後3時からトークイベント「韓国における新しいインディペンデント映画の潮流」あり。韓国のパク・チョルス監督が来日。