今年は戦乱に巻き込まれた朝鮮を率いた名宰相・柳成龍(1542~1607)が亡くなって400年に当たる。韓国国立中央博物館はこれを記念して、柳成龍の偉業を振り返る「朝鮮の偉大な宰相、柳成龍展」を、7月8日まで開催中だ。また特別館では「金子量重寄贈 アジアの漆器展」が、同じく7月8日まで行われている。
◆理想の指導者像 ――柳成龍展
柳成龍(1542~1607)は、朝鮮朝時代の学者であり同時に官僚だった。李退渓の門下に入り、彼の学門を継承する一方、30年間官僚として働き、豊臣秀吉が朝鮮に攻め入る気配を察知すると、李舜臣らを登用する一方、金誠一らを日本に派遣し、動静把握に務めた。しかし、朝鮮朝内部の動揺を避けるため、金誠一らとともに「朝鮮に攻め入る気配はない」と主張したため、壬辰倭乱が起きると、反対派によって一時失脚させられる。しかし、すぐに復帰し、軍を再編する一方、避難民を救済。また明軍と折衝を行うなど、日本軍を撃退するために全力を尽くした。
戦後、職から退いた後は、戦争の惨状を回想し、その反省の記録、『懲毖録』を著述した。『懲毖録』を通じて柳成龍は、指導者の明晰な判断力、安保に対する識見、そして国際的な外交能力などがどれほど重要であるかという教訓を残した。
柳成龍は、国際情勢を正確に理解し、外交的な対策を講じた外交官であり、門閥や階級を超え、ただひたすらに能力と実利を考えて人才を登用した真の指導者であった。
同展では『懲毖録』や当時の甲冑などを展示しながら、指導者のあり方について考える。
◆アジア造形文化の粋 ――「金子量重寄贈 アジアの漆器展」
「金子量重寄贈 アジアの漆器展」は、金子量重(かねこ・かずしげ)氏が国立中央博物館に寄贈したアジア各地の民族造形品1020点の中から、アジアの地域文化を象徴する漆器など約60点を選定して紹介する企画。庶民が日常生活で使った生活用品をはじめ、宗教関連作品が主で、収集品の製作方法および材料などに至るまで正確な情報が取りそろえられ、種類も多様だ。
漆器は、ヒマラヤ山中のブータンから東南アジア、中国を経て、韓国、日本に至るまで、広い地域で製作されてきた。中国揚子江流域では7000年前の漆器が出土し、韓半島でも平壌の楽浪遺跡をはじめとして、慶州の雁鴨池などでも多様な漆器が出土しており、紀元前後の時期に韓半島にも漆器文化が広く定着していたことを確認できる。
近年は中央アジアのシルクロードでも紀元前後時期の漆器が出土し、東西文化交流の結果、時間と空間を超越した美的感覚としての漆器文化が、広範囲な地域に広がっていたことがわかってきた。
アジア民族造形文化研究所の所長を務める金子量重氏(82)は、約40年間かけてアジア30カ国を400回以上訪ねてアジア各国の文化財を蒐集してきた。韓日文化交流に貢献したいと、2003年韓国に蒐集品を寄贈。2005年、新しく建て直された中央博物館館内に金子量重展示室が設けられ、現在に至っている。
■『朝鮮の偉大な宰相・柳成龍展』『金子量重寄贈 アジアの漆器展』
日時:7月8日まで開催中
場所:韓国国立中央博物館
(国鉄・地下鉄4号線「二村」駅3分)
料金:大人2,000ウォン
℡:02・2077・9000