韓国では季節の行事に、行楽に、お餅を使った料理は欠かせない。料理研究家の高根恵子さんに、韓国の餅料理の世界を紹介してもらった。
歴史的に見ると穀類を粒のままご飯の様に炊いて食べるよりも先に、穀類や種実を浸水させて柔らかくしつぶして加熱し餅の様な状態の食形態が発達していたことがわかっている。韓国でよく作られる餅の種類は40とも50とも言われる。大きく分けると次の四つに分類される。
1 甑餅(こしきもち、シルトック)=粉にした米に水分を含ませてから一度ふるいを通して湿気と空気を均一に含ませ、型枠や布巾を敷いた蒸し器に入れて蒸しあげる。もち米でもうるち米でも両方を合わせたものなど様々なシルトックがあり、呼び名も違う。何層にかして間に小豆やよもぎ、かぼちゃ、なつめなどを挟んだり、表面に飾ったりもする。
2 搗き餅(つきもち)=蒸した米の粉を臼や案盤(餅搗き板)の上で良くついてから形を様々に整えたもの。もち米で引切米(インジョルミ)、うるち米で切餅(チョルピョン)などがある。
3 煎餅(チョンピョン)=穀類の粉を練って平たく伸ばし、油で焼いたもの。油煎餅(ユジョンピョン)とも呼ぶ。季節の花や種実を貼付けて焼いたり、中に包んだりして仕上げる。
4 団子(タンジャ)=もち米の粉を練り、ゆでて表面にきな粉や細かくした種実などをまぶしつけたもの。つけたものによって様々な呼び名がある。
季節の行事食、家族の歳を追うごとの儀式など様々な場面で餅は欠かす事なく登場する。名節(ミョンジョル)と言って奇数の重なる日や各月十五日にはいろいろなお餅を作って食べたり、周りに配ったりもする。
1月1日にはうるち米で作った白餅(ヒントック)。搗き上げた餅を直径2㌢位の棒状に伸ばし、昔のお金の様な形にと包丁で斜めに切って楕円形にしてお雑煮(トック、ピョンタン)に入れる。新年に親族が集まった際まず始めに出される料理である。1月5日には甑餅(シルトック)が大きく作られる。家族で分け合って食べ、一家の安泰を願う。
2月1日にはよもぎを搗き込んだ餅や松片(ソンピョン)を作り、家族それぞれ歳の数だけ食べる。ソンピョンは搗いた餅の中に様々な餡や種実、果実を入れ松葉を敷いて更に蒸し、香りをつける。この時だけでなく一年中いろんな場面でつくられる。神様に供えたり、子供が産まれて百日目、一年目などにも作られ配ったりする。
旧暦の8月の秋夕(チュソク)には収穫したばかりの新米でソンピョンを作り、中の餡も採れたての栗やなつめなどで作り豊作を感謝する。10月から11月には告祀(コサ)を行うのに甑餅(シルトック)を作る。家の中の様々な神様へそれぞれシルトックを丸ごと供え、厄運を祓い繁栄を祈願するのである。この時のシルトックは厄を逃れるためにと小豆が使われる。
数え上げればまだまだたくさんの餅があるのだが、今回は一番手軽な団子、瓊団(キョンダン)をご紹介します。白玉粉をこねる水分を牛乳にすることで柔らかい食感に仕上がる上に栄養価もアップする。
たかね・けいこ 料理研究家。韓国などさまざまな国の料理を研究し、実際に調理。著書に「食べて治そう!たのしくおいしい朝鮮料理」
■瓊団(キョンダン)■
◇材料:4人分◇
白玉粉 200㌘
牛乳 200cc
きな粉やすりごまなど 大さじ4
砂糖、塩 お好みで
<作り方>
①鍋にお湯を沸かしておく。
②白玉粉に固まりがあるようなら、スプーンなどでつぶしておく。
③牛乳を少し残して入れ、よくこねる。
④まとまらないようなら残りの牛乳も加え、なめらかな生地にする。
⑤直径2㌢位に丸める。
⑥熱湯でゆでる。ゆであがりの目安は浮いてきてから1~2分。団子がふっくらしたら中まで火が通っています。
⑦きな粉やすりごまに砂糖、塩で好みの味をつけておく。分量の目安は きなこ大さじ4に対して砂糖小さじ2~3、塩少々。もちろん塩味でもおいしいです。
⑧ゆであがった団子の水分を良く切ってからきな粉やすりごまをまぶす。
★きな粉も黄大豆だけでなく青大豆(うぐいすきな粉)などにしたり、すりごまを白と黒、細かく刻んだ松の実などいくつか用意しても見た目も楽しくおいしくできます。
★すぐに食べない場合はゆで上がった団子を冷水にとって良く冷まし、水気を切っておきます。食べる直前にきな粉等をまぶします。