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2007/03/09

<韓国文化>韓国、日本の"いま"を写真に

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    李昌炫「Fukuzawa Yukichi's Museum at Keio University」

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    61日間、1575㌔を走破して金井さんが切り取った「韓国の素朴な日常」

 韓国・国民大学校の李チャンヒョン教授が、東京で見た東洋と西洋の様々な文化の融合を写真にした作品と、日本のフリーカメラマン金井三喜雄さんが韓国徒歩グループのメンバーと61日をかけて韓国を一周した期間中に撮った作品を展示する「韓日交流写真展」が、東京・南麻布の韓国文化院で開催中だ。2人の写真と李教授の文章「東西文明の出会いを顧みる」を紹介する。

◇多層的な東京文化 李チャンヒョン・国民大学校教授◇

 日本近代の設計者である福澤諭吉は、脱亜入欧という言葉をもって近代日本への舵を切った。日本はこれをとおして西欧帝国主義と肩を並べることができ、とうとう世界大戦を迎えることになる。脱亜入欧の精神は日本を西洋と同一視するようにし、アジアを支配の対象として他者化したのであった。そういう意味で日本はアジアにあってもアジアではなく、日本人はアジア人ではなかったのである。

 近代は明らかに輸入されたものであったが、日本は西欧近代の内面化に成功する。シルクロードの東の端において、おそらく西の端から発信された「近代」のシグナルをもっとも正確に複製したといえるだろう。西洋近代のDNAが東洋の体細胞と結合して見事に成体を作り出したのである。

 模倣することで生命力を作り出すのが文化の特徴であろう。日本が西洋のDNAを持ってきたとはいえ、そのDNAは体細胞の環境に合わせて突然変異を起こすことで進化する。

 映画というジャンルはいうまでもなく西洋のものであるが、日本はその映画の変形を追求する。黒澤明の「羅生門」、小津安二郎の「東京物語」が日本的内容を盛り込むものだとすれば、宮崎駿は「アルプスの少女ハイジ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」というものをとおして日本型アニメーションの新しいジャンルを作り上げる。文化はハイブリッドになることでいっそう豊かになるものといえるだろう。

 韓流は日本文化のアメリカ化に対する反作用として出発する。世界大戦以降、日本の主流文化にはアメリカナイゼーションの流れがあった。日本においてアジアは脱出すべき大陸であり、アメリカは羨望の大陸であった。アメリカ文化の好みは都心でもみることができる。

 韓流はアメリカだけを羨望してきた戦後日本の文化志向を変える動きである。自らの周辺の同質性を異質化し、西欧の異質性を同質化することに努めてきた近代化の過程で、日本文化は自己否定の桎梏から抜け出すことができなかった。こうした文脈から韓流が日本の主婦層により始まったのである。

 東京は東西文化の交差点である。また、近代と現代の博物館であり、未来の展示場でもある。東洋と西洋の文化が出会い、新たな雑種強勢を獲得し、近代と現代の文化が積み重なることで新しい未来文化を夢見るのである。

 過去、日本は西欧的近代をあるがままに模倣してきたが、いまや日本文化はそれ自身に限定されない。過去の文化的地層の上に新たな文化が流入して未来文化を模索する。東洋の中にありながら東洋を拒否してきたこれまでの近代化の文化的所産と、いまの韓流のようなアジア指向的文化の流れが共存するのである。こうした面で東京文化は多層的である。一つの層として説明するよりも多様な層の重畳があるからこそ、東京はいっそうその彩りを放つことができるのである。

◇韓国の普通の人々に触れて 金井三喜雄さん◇

 元朝日新聞カメラマンで、現在フリーカメラマンとして活躍する金井三喜雄が、今回の韓日交流写真展に出品したのは、2005年に行われた「韓日一周友情ウォーク」の記録。「人々の普通の日常に触れ、友情を育みたい」という金井さんの言葉通りの、素朴な風景に心が和む。


■韓日交流写真展■

日  時:13日まで 
場  所:韓国文化院(東京・南麻布、℡03・5476・4971)
内  容:李チャンヒョン「東京物語:異邦人の視線でみてまわった東京」
     金井三喜雄「韓国一周友情ウォーク=人々の日常に触れながら」
入場料:無料