韓国食文化の魅力を知らせようと、「韓の味―発酵キムチ」と題した講演会が、韓国文化院の主催でこのほど行われた。朴完洙・韓国食品研究院責任研究員の報告「韓国のキムチ文化と発酵キムチの機能性」を紹介する。
キムチは塩漬けにした白菜や大根、キュウリなどの野菜に、唐辛子をはじめとする各種調味料を混合し、一定期間発酵させた乳酸発酵食品だ。独特の風味を持つ韓国を代表する伝統的発酵食品といえる。キムチは長い間、韓国人の食卓に欠かすことのできないおかずとして利用されてきた。とりわけ、新鮮な野菜を求めるのが困難な寒い冬季、新鮮な野菜の味を楽しめるのはキムチのおかげであり、無機質とビタミンのよい供給源として、韓民族にとり必須の食品となっている。
キムチは、1988年のソウルオリンピックをはじめ、1998年のサッカーフランスワールドカップ、2002年韓日ワールドカップ及び2004年アテネオリンピックの公式食品に指定され、世界の多くの人たちに愛されてきた。2008年4月、韓国人として最初の宇宙飛行士が誕生したが、彼女のためキムチの宇宙食が開発された。また、今年中国で開催される北京オリンピックや今後の国際的なスポーツ行事などでも、欠かすことのできない公式食品になると予想され、キムチの世界化が今後さらに加速化すると見込まれる。
キムチは、地域及び季節によって多彩な野菜を原料とし、材料の配合の割合及び熟成方法も非常に多様である。また、キムチは家庭ごとに伝来の独特の方法で漬けるため、漬ける者の腕前によってもその製法や味が変化する。さらにキムチは、野菜を原料とした単純な発酵食品の段階を超え、塩辛類や魚介類、各種調味料・香辛料などが加わった複合発酵食品でもある。
一般の食品と違い、生きた食品であるキムチは保存及び流通中にも発酵が続く。これらによって生化学的な変化が起こって味も変化するため、発酵及び熟成の期間中、その時期ごとの独特なキムチの味を楽しめることも大きな特徴の一つだ。
今まで調査されたキムチの主材料に使われる野菜類は約30種類であり、これに副材料を添加してさまざまなキムチとなる。副材料の中で果実類は香味を増進するため、穀類や糖類(主に砂糖が使われる)は乳酸発酵を促進するために夏季に多く利用される。動物性材料では肉類と魚類が使われ、これらはキムチ中のアミノ酸成分などを補強する材料である。キムチの独特の香味は添加する調味料・香辛料によって大きく影響を受ける。代表的なものとして唐辛子、ニンニク、ショウガなどがあり、ほとんどすべてのキムチ類に使われている。
発酵食品であるキムチは、栄養学的な側面からみて非常に優秀であり、現代人に必須の健康食品として再評価されている。キムチは野菜を主材料に使うが、韓国特有の天日塩と各種香辛料、そして海産物、果実類、穀類などが多様に混合され、発酵作用を経て、人体に非常に有益な影響を及ぼす。
おいしく発酵したキムチには、生きた乳酸菌がヨーグルトの数十倍、1㌘当たり10億以上存在し、人間の腸内の細菌環境を整える(整腸作用)。また、発酵の結果として生成される乳酸を含めたさまざまな有機酸は、人体内でカルシウムや鉄分などのミネラル成分の代謝を促進する。人体に必要な一部ビタミン類もキムチの発酵中、乳酸菌によって生成されるという報告もある。
それに付け加えて、キムチは原材料に存在するさまざまな栄養成分と乳酸菌によって、多様な機能性と生理活性を持つ。例えば、乳酸菌と有機酸、食物繊維によって突然変異の抑制、ガン細胞の成長阻害、免疫系の活性化によるガン予防効果と坑ガン効果があることが知られている。
また、キムチの食物繊維及び発酵中生成する乳酸菌に、コレステロールを低下させる効果があるという報告もある。キムチの摂取は血中のコレステロールの量を減少させて、血栓を作るフィブリンを分解し、動脈硬化を予防する効果を持つという。
動物実験によると、高脂肪食品を摂取していても、キムチを摂ることにより減量効果が現れた。このダイエット効果では、唐辛子内の辛味成分であるカプサイシンが重要な役目を果たすが、カプサイシンの効果は、適切に熟したキムチ中で最も高くなる。キムチは発酵過程で乳酸をはじめとする有機酸を生成し、また、豊かな食物繊維によって便秘予防に多くの効果がある。
また、発酵して酸味を強めたキムチは、アルコールを中和する役目を果たすことも知られている。最近、食中毒を引き起こす微生物が、発酵するキムチ中で生存できず、死滅あるいは抑制されるという研究結果も報告された。最後に、キムチそのものに含まれる栄養成分による栄養学的な価値以外にも、キムチ特有の風味による食欲増進効果も無視することができない。
韓国の伝統発酵食品であるキムチは、その野菜の発酵食品としての科学的な優秀性と栄養学的な価値を考慮すれば、現代人に必要な健康食品として、もっと注目されてもよいだろう。