韓日合同制作の演劇「焼肉ドラゴン」が、東京・初台の新国立劇場で上演され、大好評を博した。万博が開催された1970年前後の大阪を舞台に、焼肉屋を経営する在日家族の姿を通して、韓日の過去・未来を描き出した、在日の劇作家、鄭義信の意欲作だ。観客はこの作品から何を感じたのか、寄せられた声を紹介する。
玄沙愛さん(在日3世、30、会社員)は、「最後まで泣きながら見た。私も大阪出身だが、祖父母の家と舞台の集落がとても似ていて懐かしかったし、登場人物の一人が父とすごく似ていたのも印象に残った。在日の問題を暗くせず、明るく喜劇的に描いていたのがよかった」と語った。
尹春江さん(在日3世、46、通訳業)は、「これまで在日を描いた映画や演劇は、差別の苦しみ、それに対する恨み節などが多かったと思うが、この作品は家族愛とか人間の普遍的なテーマが描かれている。そこに共感を持った。3姉妹が最後、日本、韓国、北朝鮮に分かれて暮らすことになるが、在日ならではの悲哀であり、とてもうまく表現されている」と評価した。
出版社を経営する高二三さん(在日2世、57)は、「在日の生活、諸問題が凝縮され、在日をストレートに描いた好感が持てる芝居だ。日本社会に対して、あなたの隣に泣き笑いしながら生きている在日がいるということを伝えてくれた。ぜひ再演してほしいし、テレビでも放送してもらって、多くの人に見てもらいたい」と述べた。
40代の在日2世の女性は、「韓国に留学経験があるが、韓国の人は在日のことをほとんど知らないことを痛感した。韓国でも上演されるので、韓国の観客がどういう反応を示すか知りたい。だから韓国にも見に行きたい」と語った。
新国立劇場には、「この時代の在日の苦労は在日3世の私にとって少し想像は出来ますが、多くを知りません。私は在日に関するあらゆる事に興味があります。いま1歳の娘に将来知る限りの事を話して聞かせたい。今日の舞台は涙が出ました。私の祖父祖母はどんな苦労をしてきたのだろう。その苦労があって私は豊かに生きてこれた。もっとたくさんの在日に関する舞台や映画を作って下さい」(20代、女性)、「すばらしいの一言につきる。私も在日2世で父の背中を見て大きくなった。まさにスライドインしたような気分がした。とにかくワンダフル!」(未記入)などのアンケートが寄せられた。
日本の方からは、「日本の占領の犠牲になり、在日としてとり残された人々の存在を後世に忘れてはならないと思った。差別や偏見の中で、家族や同胞の人々とのつながりは深くエネルギッシュで愛情深いものだった。耐えて耐えてアイデンティティーを持ち続ける夫婦の姿は感動的」(50代、女性)との声があった。
さらに「寄りそって暮らしていた人々がばらばらになり、築いてきたものを失って町を去ってゆく在日の夫婦が、明日を信じている姿がすてきだった。リヤカーを引っぱってゆく背中にエネルギーを感じた。口数の少ない焼肉ドラゴンの店主に“生”へのエネルギーをものすごく感じた」(40代・女性)などの声が寄せられた。
同劇は20日から25日まで、ソウル芸術の殿堂で上演される。