在日有志などで作られた「時調の会」がこのほど、「時調」第9集を出した。そこから数編を紹介する。
時調の会は当初、在日2世を中心に「在日の時調(三行詩)の会」としてスタートした。韓国の定型詩「時調(シジョ)」にならって、在日文化の底上げと韓日交流を促進するために作られた。
時調は高麗王朝後期となる14世紀後半までに成立した詩型で、自由律の短歌である。短歌は「歌う」ことが強調されるが、時調は「語る」ことが強調されている。
日本人の参加メンバーが加わり、また韓国からの寄稿も続いたので、会の正式名称から「在日の」を外し、また韓国では自由詩が隆盛なことなどもあって、「三行詩」の文字も外した。
同会ではハングル作品のほか、日本語の場合は1行20字前後で3行を基本の決め事にし、あとは自由としている。
月に1回例会を開き、そこではメインテキストに「韓国近現代時調選集(広岡富美・編訳)」「韓国時調四四三選(瀬尾文子・編訳)」などを使って論読と、懇親会を行っている。
同会は今年、日本の詩壇・歌壇との交流を深めたいとしている。
時調第9集は頒価1000円(送料込み)。毎年3月に刊行。会員は国籍・年齢問わず。年会費3000円。連絡先は〒210-0846川崎市川崎区小田1-13-4金方「時調の会」幹事会事務局。FAX044・355・6907。
■十一月の薔薇 蔡 春夫■
一滴一滴が命につながる点滴
白いしずくを吐息が後を追う
凝縮された食に見つめる明日
紅花は朽ちて地面に落ちる
その命が異邦人のわたしに問う
一枝の青き棘の激しきを見よと
■私のオルガノ(金剛学園の思い出) 高 裕香■
子供たちと遊んだ校庭はもうない
子供たちと学んだ校舎ももうない
夢と希望の輝かしい日々
優しい心は育ったかい
正しい心は鍛えたかい
みんな幸せでいるかい
熱く燃えたトランペット鼓笛隊
運動場で鳴り響いたね
みんなに愛されて育った日々