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2009/07/10

<韓国文化>韓国現代美術館の深層を探る

  • 韓国現代美術館の深層を探る①

    Lee Jihyun 《Smithsonian+Rm_2》 2007
    Courtesy of ARARIO Gallery and the artist

  • 韓国現代美術館の深層を探る②

    Yoon Jeongmee 《The Pink Project-Yerim and Her Pink Things》 2005

  • 韓国現代美術館の深層を探る③

       Yee Sookyung 《Translated vases》 2009 Courtesy of theartist
       Photo : Shin oh seok

 「ダブル・ファンタジー 韓国現代美術展」が、7月12日から10月12日まで、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川県丸亀市)で開催される。近年躍進を遂げる韓国現代美術を紹介する特別企画で15人の作家が出展する。

 1980年代後半からアジアの現代美術が注目を集め、韓国の現代美術も国際的に紹介されるようになり、日本においても90年代半ばから、韓国現代美術展が盛んに開催されている。さらに韓日文化交流年や、友情年にも盛んな文化交流が行われ、韓国現代美術が紹介されてきた。同展は韓国の現代美術をまとめて紹介する展示会としては、久しぶりの企画となる。

 韓国の独自の文化、伝統に根付いた美意識や、民族的、社会的な歴史を背景に築かれてきた韓国現代美術は、87年の民主化宣言以降の急速な社会変化や、その後の情報化社会の訪れに加えて、光州ビエンナーレなどの国際展の開催や海外との交流、現代美術館、アートスペース、商業画廊の増加によってアーティストの発表の場が拡がり、取り巻く環境の変化にも影響されながら、多様な展開を見せている。

 同展のタイトルである「ダブル・ファンタジー」とは、現代社会のひとつの断面を表す言葉として用いている。現代においては、自然と人工、現実と虚構、伝統と革新、ローカルとグローバルなどの相反するものが、対立という位置に在るのではなく、共存、もしくは混在する状況もしばしば見受けられる。

 コンピューターや科学技術の進歩、情報化社会の発達に伴い、そうした相反するものの領域は曖昧となり、時にそれらは混じり合い、ハイブリッドなものを生み出したり、あるいは奇形的な進化を遂げ、歪みや亀裂となって表れたものが、新たな価値観や、美意識の礎となることもある。

 また最近では、現実の世界でフィクションでしか起こりえないような凄まじい出来事を見せつけられることも多く、夢が意識に対する補償作用となるように、人々が意識下において、ファンタジーに救いを求めることもあると推測される。

 曖昧で不穏な時代に生きる人々にとってのファンタジーとは、闇と光の両方の側面を持ち合わせ、ある種のグロテスクさをも内包していることで、リアリティを持って迫ってくる。

 同展では、こうした時代の深層を敏感につかみとり、絵画、写真、ビデオ、彫刻、インスタレーションといった多様なメディアを用いて視覚化している韓国の若手アーティストの作品を紹介している。

 日本の観客が、同時代の空気を共有したり、また差異に刺激を受けながら、“近くて遠い国”と称される韓国を新たに見つめる機会となると期待される。

 参加作家は、日本では初めて紹介される作家を多数含む、フレッシュな顔ぶれとなっている。その多くは70年代、80年代生まれの作家で、なかには、日本での紹介が海外では初めての発表となる作家も含まれている。

 絵画、写真、彫刻、ビデオ、インスタレーションと用いるメディアも様々で、表現は多様を極めている。韓国現代美術のこれまでのステレオタイプなイメージを裏切る作品や、日本の若手作家との共通点を見出せるものなど、めまぐるしく移り変わる韓国の社会情勢や文化的背景を反映している。会期中はウォールペインティングやインスタレーション、講演なども企画されている。


■ダブル・ファンタジー 韓国現代美術展

日時:7月12日~10月12日
場所:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
料金:一般950円ほか
電話:0877・24・7755
※7月12日に作家のトークあり