夏から秋に向けてのトピックスを紹介したい。最近はJポップもKポップも、ダウンロードはたまた着うた全盛の時代となり、じっくりと音楽を楽しむ時間が減少している気がしてならないが、ジャズ・ボーカリスト、ウンサン(Woong San)のメジャー・デビュー盤『FEEL LIKE MAKING LOVE』が好調なセールスを更新中。
これまで、金相姫(キム・サンヒ)、朴京姫(パク・キョンヒ)、尹シネ(ユン・シネ)等多くのコリアン・ディーバを日本に紹介してきたポニー・キャニオンが日本の音楽マーケットへ放った新星が彼女だ。
釜山出身で、98年の日本上陸以来、ブルース・フィーリングに溢れた喜怒哀楽がジンワリと滲み出る歌声が玄人筋(くろうとすじ)に評価され、“口(くち)コミ”で人気沸騰し、04年にファースト・アルバム『Love Letter』が日韓同時リリースされ好評を博した。
特に、ベテラン・ジャズ・ピアニストのベニー・グリーン等とレコーディングした作品で、人気は決定的となり、更に06年に発表されたセカンド・アルバムではオリジナル曲をたっぷりと収録。07年発売のサード・アルバム『Yestenday』は翌年の『コリア・ミュージック・アワード』でアルバム賞及び歌唱賞を受賞し、現在韓国では人気、実力ともにナンバー1のジャズ・ボーカリストと認識されている。
通算4枚目の作品となる本作では、自ら作詞・作曲も手がけたオリジナル曲2曲と、ジャンルや時代を越えて多くの人々から愛され続けているスタンダード・ソングを収録、“COZY”(温かく、くつろいだ)な雰囲気と出色のコンセプトに賞賛の声が寄せられている。
ジャズ以外のジャンルに目を移せば、スポーツ関連でユニバーサルミュージック傘下のドイツ・グラモフォンからリリースされた日本でも人気のフィギュア・スケーター金妍兒(キム・ヨナ)のアルバム『キム・ヨナ~銀盤の妖精』も話題を呼んでいる。世界の頂点に君臨する彼女が演技時に使用した楽曲と本人が愛するクラシック・ナンバー全20曲を収録しており、写真集も付いている。
さて、今や邦楽市場で幅広いシェアを誇るテイチクエンタテインメントの稼ぎ頭となったチェウニとチャン・スーが引き続き新曲を発表し、話題となっている。
チェウニはエキゾチシズム溢れるバラード『NARITA発』そして『オリエンタル・ララバイ』からやや路線を変更し、韓流ファンにはつとに有名なハ・ジウォン、イ・ソジン、キム・ミンジュン主演による時代劇『チェオクの剣』の主題歌『悲恋歌』をリリース。哀愁感に満ちたブルーな歌声は相変わらずの人気で安定したセールスをキープしている。
一方のチャン・スーは、日韓デビュー30周年を迎え、再び本名のチャン・ウンスクへと改め、テイチク移籍10年目にふさわしい意欲作『覚悟次第』を発売。NHK総合テレビの人気番組『歌謡ステージ』等での熱唱が好評を呼んでいる。
“リズム歌謡の女王”とでも名付けたいソウルフルな歌唱には定評があるが、すでに有線放送を中心にかなりの反応を集めており、今後の動向が気になるところだ。
最後にカラオケ・ボックスを経営するUGAとタイアップし、コンピレーション盤としては業界でも希(まれ)なスマッシュ・ヒットとなった。同じくテイチクエンタテインメント発売の『熟カラ!!~アジアの歌姫編~』を紹介しよう。
テレサ・テン、欧陽菲菲、ジュディ・オング等の台湾勢や日本の天童よしみ、モンゴルのオユンナ、フィリピンのテシー・レイズ等往年の代表的ヒット曲と共に韓国からはキム・ヨンジャとチェウニ、チャン・ウンスクの3人が登場。
秋元順子の『愛のために』で一躍ブレイクした日本の熟年カラオケ・ファンのハートを一気につかむ意欲的なコンセプトが憎い。