韓国とアジアの美術を知る展示会が、都内で開かれている。サントリー美術館では「美しきアジアの玉手箱 シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展」、東京国立博物館では「藍が彩るアジアの器 特別展・染付」、そして古代オリエント博物館では「日韓共同企画展 ユーラシアの風 新羅へ」を開催中だ。
◆美しきアジアの玉手箱 サントリー美術館◆
「美しきアジアの玉手箱 シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展」は、ワシントン州最大の港湾都市シアトルにあるシアトル美術館の所蔵品を展示する企画だ。
同美術館は、地質学者で美術コレクターでもあったリチャード・E・フラー博士(1897~1976)が1933年に設立したもので、造形美術の交流と対比をテーマに、東洋美術・西洋美術・アフリカ美術にわたる世界各国の美術品を所蔵している。今回は東洋美術コレクション(約7000点)の中から、選りすぐりの優品約100点を展示している。
韓国美術は、高麗時代(12世紀)の青磁象嵌菊花文盞托(せいじぞうがんきっかもんさんたく)一組、朝鮮朝時代の作家、李公愚の梅図(19世紀)、同じく朝鮮朝時代の白磁瓶(15世紀)などが出品される。
日本美術は、縄文時代の土偶にはじまり、平安時代の仮名の名筆「石山切」、鎌倉時代の仏教絵画の名品「地獄草紙断簡」や、漆工の名品「浦島蒔絵手箱」、室町時代のやまと絵屏風の注目作「竹に月図」、さらに江戸時代からは、シアトル美術館を代表する名品「烏図(からすず)」屏風、尾形光琳の水墨画屏風や葛飾北斎の肉筆浮世絵などが展示される。
中国美術は、陶磁器や青銅器のほか、元代の水墨画の傑作として名高い「墨梅図」、明代を代表する文人・文徴明の名筆「金焦落照図寄詩(きんしょうらくしょうずによせるうた)」などが登場する。
◆藍が彩るアジアの器 東京国立博物館◆
染付とは白磁の素地にコバルトを含んだ顔料を用いて筆彩で文様を描く技法をいう。透明釉(とうめいよう)を掛けて焼成すると文様は鮮やかな藍色に発色する。
染付の技術と様式が完成されたのは元時代後期、中国の景徳鎮窯でのこと。明時代には宮中の御用品を焼く官窯でも採用され、以後磁器の絵付け技法の主流となった。また、染付はベトナムや朝鮮に伝わり、それぞれに個性豊かな染付が焼かれた。日本では江戸時代初期に朝鮮半島から渡来した陶工によって技術が伝えられ、九州肥前有田において染付の生産が始まり、やがて繊細な濃染め(だめぞめ)の技法を駆使した優美な様式が完成された。
染付は堅牢で実用性に富む性質から人々の生活に深く浸透し、実用の器として親しまれてきた。
朝鮮半島では、朝鮮朝時代(1392~1910)前期の15世紀中頃に中国から技術が伝えられ、染付の生産が始まった。コバルト顔料が希少のため、生産量は限られていた。
朝鮮時代前期、染付の絵付けは専業の画家が行ったと考えられる。
16世紀末から17世紀前半にかけて外国の侵略に見舞われ窯業は大打撃を受けた。そのためこの間の染付については不明部分が多い。18世紀に入って染付が復活した。この時期の作品は余白に控えめな筆づかいで草花文などが描かれている。その作風は日本では「秋草手(あきくさで)」の名で愛された。朝鮮独特の美意識がもっとも純粋な形であらわれた染付といえる。
◆ユーラシアの風 新羅へ 古代オリエント博物館◆
ユーラシア東端で漢帝国が崩壊すると、草原の遊牧民族による空前の大移動がおこり、やがて中央アジア、南シベリアを含め中国全土を統一する唐の国際文化が形成されていった。
この大きな潮流の中で韓半島に生まれた新羅は、ユーラシア西方の香りを伝える独特な文化を形成し、やがて7世紀には、韓を統一する王国にまで成長した。
同展では、韓国「新羅」が持つ特有の文化遺産を東西の遺宝を比較しながら紹介する。また、日本に伝わる大陸文化の流れに新羅が果たした役割なども考えていく。
韓国の国立慶州博物館および国立済州博物館において2008年9月から2009年2月に開催された『新羅と西アジア』展の趣旨と展示品の一部を受け、日本側で新たに構成した日韓共同企画展となる。
展示構成は第1部が「新羅の風土と歴史」で、慶州の古墳文化、金色の新羅王、花開く統一新羅の文化。第2部が新羅の中のユーラシア。
■美しきアジアの玉手箱■
日時:開催中(9月6日まで)
場所:サントリー美術館
料金:一般1300円、大高生800円
電話:03・3479・8600
■藍が彩るアジアの器■
日時:開催中(9月6日まで)
場所:東京国立博物館
料金:一般1000円、大学生800円
電話:03・5777・8600
■ユーラシアの風 新羅へ■
日時:8月1日~9月6日
場所:古代オリエント博物館
料金:一般1200円、大高生700円
電話:03・3989・3491