韓日を舞台にした「ロミオとジュリエット」の世界が、両国の演劇人によって表現される。世宗文化会館ソウル市ミュージカル団と東京ギンガ堂による韓日共同制作ミュージカル「The Sound of Silence~沈黙の声」は、先月の韓国公演を終えて、11日から東京など4カ所で全国公演される。韓日の恋人が戦争によって引き裂かれる姿を描いたもので、「アジア版ロミオとジュリエット」というべき世界が展開される。また同じく韓国と演劇交流を行っている日本の劇団「東京デスロック」は、「ロミオとジュリエット」の韓国人版と日本人版の二本立てを制作し、今月下旬から両国で上演する。
『The Sound of Silence~沈黙の声』は、2005年の韓日友情年に記念上演された『沈黙の海峡』を原作に、新作ミュージカルとして上演される。韓日合作のオリジナル・ミュージカルは初の試みとのこと。物語は第2次世界大戦末期に記憶を失った主人公、金東真(キム・ドンジン)が60年後、精神病院の音楽セラピーにより記憶を取り戻すところから始まる。
やがて、主人公には日本人の恋人、美和がいた事、さらに日本人の親友がいた事、そして若い彼らが戦争に巻き込まれ、引き裂かれていったことが明らかになる。今回は歌やダンスをふんだんに取り入れ、戦争の悲劇を描く音楽や振り付けも韓日合同で担当している。
主人公を韓国ミュージカル界のスター、ミン・ヨンギが演じ、日本人の恋人を元宝塚歌劇団の初嶺麿代が演じる。ミン・ヨンギは今作品が日本初登場となる。
韓国公演では、「1940年代日本に留学し、強制徴用されて、東南アジアの戦場に引きずられて行った20代の青年、金東真(金田)が受けた戦争の傷痕を巧みに描き出した。東進が母から習った伝統音楽、友人らと共に吹いた草笛などの叙情的な音楽、そしてミン・ヨンギの力強い歌唱力が印象に残る。両国の微妙な歴史認識の差と、言語と文化の差を乗り越えるべく、両国の劇団が制作に挑んだことを評価したい」との声が寄せられた。
原作者で脚本・演出を韓国側とともに担当する東京ギンガ堂の品川能正さんは、「重いテーマだが、エンターテイメントに仕上げたことで、楽しみながら歴史・民族問題に触れてもらえると思う。民族を乗り越えた愛が平和につながることを伝えたい」と話す。
一方、東京デスロックによる韓日版『ロミオとジュリエット』。同劇団はこの数年、韓国との交流を活発化している。
韓国版は昨年ソウルで制作し、両国で上演した『大恋愛~3人の演出家によるロミオとジュリエット~』3~5幕をベースに、韓国で最終完成させた完全版。韓国人俳優の躍動する身体、肉声を体感することができる作品で、原作に忠実に作られている。
一方の日本版は、現在を生きる私たちにとって、ロミオとジュリエットという悲恋物語はどういう意味を持っているのかを問いかける形で作られている、まったく新しい作品となっている。
構成・演出の多田淳之介さんは、「ロミオとジュリエットは本当に悲劇だったのか。敵の家同士だったから周りの人にとっては、不幸だったが、2人は幸せだった。愛と死を深刻ではなく、ハツラツとダンスを通して表現したかった」と話す。
上演期間中、韓国人俳優との交流イベントやワークショップも行われる。
■The Sound of Silence~沈黙の声■
11日=山口・宇部市渡辺翁記念会館
14日=大阪・シアターBRAVA!
17日=名古屋・名鉄ホール
21~28日=東京・紀伊国屋ホール
料金:東京は前売り5000円、当日5500円
その他は要問い合わせ
電話:03・3352・6361
■ロミオとジュリエット■
17、18日=韓国・南山芸術センター
24~28日=埼玉・富士見市民文化会館
料金:一般前売り3000円、当日3500円
2本セット券あり
電話:049・268・7788