韓国を代表する抽象画家、柳淑子さん(55)の個展「関係と蘇生 又 平和」がこのほど、東京と大阪の韓国文化院で開かれ、好評を博した。柳さんは、「日本での個展が実現してうれしい。韓日、そして世界の平和を願って、これからも描き続けていく」と語った。
柳さんは1953年、韓国・全州生まれ。中央大学校・芸術大学院、成均館大学校・文献情報学科などを卒業後、抽象画の世界に入った。画家生活は30年を超える。現在、韓国美術振興会の理事を務めるなど、韓国抽象画をリードする存在だ。
15年ほど前から京畿道の楊平(ヤンピョン)にアトリエを構え、その地の自然に魅了されたことが、新たな作風を生むきっかけとなった。楊平はソウル都心から車で1時間ほどの距離にある。アトリエ近くには川が流れ、夜は星が多く輝き、鳥のさえずりも聞こえ、空気も甘い。
「孤独と静寂が支配する、楊平の自然環境に影響を受けた。土の力を強く感じるようになって、土を使って表現し始めた。パステルなど人工的な素材は自分の作風と合わない。愛を表現する手段として、自然の素材による色を使っている。自然の土や砂に接着剤と水を混ぜ、カンバスに下塗りする。それに手でたたいたりナイフで削る技法で、独自の抽象画を作り出している」
「土は色々な特性と色を持っている。全国を旅して、様々な土を探すようになった。土に接着剤と水を混ぜて調整する。土の色の調整がとても難しい。また練炭は、燃えきった後のものが色が変色しないので使用している」
その柳さんの作品は、モダニズムで暖かく、ぬくもり、そして人間の愛を感じさせてくれると、高い評価を受けている。
権哲信・成均館大学校教授は、「柳淑子氏の絵は、画家と観客が分離することなく、共に創造の深淵に溶け合い、同じ精神世界を共有することにある。全ての生命体に多様に付与された関係が、和合し、蘇生し、自然と人間の生活が平和になるようにとの作家の暖かいメッセージが伝わってくる」と評している。
韓国国立現代美術館に柳淑子さんの絵が寄贈されており、またテレビドラマや映画の撮影で、舞台背景にも、よく使われている。
「世界的に最近の抽象画は、自然なもの、癒しの表現を大切にする方向にある。私もその流れにマッチしている。一番大切なものは人間と人間の関係ではないだろうか。神と人間の関係、人と人の関係、人と自然の関係、関係の中にこそ希望があり、すべての関係がよくなってこそ平和が訪れる。韓国と日本は近い関係にあり、多くのものを共有できる関係になれればと願っている。画家の作風も違いがあるので、作家の韓日交流を進めれば、お互いに学びあう点があると思う」
来年は英国、ドイツ、フランスでも個展を開く予定だ。