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2009/02/20

<韓国文化>"韓紙には民族の魂がある"

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    全光榮「Aggrebation 05-AU003」 2005年

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    チョン・クァンヨン 1944年江原道洪川生まれ。68年弘益大学美術学科、71年米フィラデルフィア美術大学院卒。主な受賞歴は、69年韓国の国展で特選、74年米チェルトナム・アートセンター銀賞など。

韓紙を使ったコンテンポラリーアートで世界的評価を得ている全光榮(チョン・クァンヨン)さんの日本で初の個展「全光榮展 世界を魅了した韓紙アートの傑作」が、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開かれている。来日した全光榮さんに話を聞いた。

 なぜ古い韓紙を使うのか。韓紙は韓民族の歴史で作られた、民族の魂が入っているものだからだ。私は江原道の山地で生まれ、その土地に根付いて生きてきた。米国で西洋美術を学び、その後13年間、米国で西洋画を描き続けてきた。

 韓国に戻ってから、韓紙を使った古文書に触れた。叔父が漢方の調剤師だったので、叔父の家の天井からは、韓紙で包まれた漢方の材料が入った袋が吊るされていた。その記憶は、私の作品「アグリゲーション=集合」に生かされている。韓紙には私の根がある。韓民族の根、かつての先人たちのメッセージを伝えたいと思い、韓紙を使った作品づくりを始めた。

 約100年前に作られた韓紙には、手あかと、そして先人の思いが入っている。作品の主題がなぜ「集合」なのか。多くの人の思いを経てたどりついた文書だからだ。

 韓国にはポジャギという包む文化がある。韓国人は包み、分け合う文化、「情」を持っていた。その温かさを伝えたいと考えた。日本にも「風呂敷」という包む文化があると聞いている。

 韓紙とポジャギ、それに日本のちまきから作品のインスピレーションを得た。ちまきは一つ一つを竹で包んでいる。私は韓紙で三角形に包んだ。三角形は重ねやすいからだ。作家はメッセージ性がないといけない。創意と想像性を大切にし、私の思いを伝える作品が、日本で展示されることは、大きな喜びだ。

 和紙と韓紙の文化は、世界的にも数少ない文化だ。この二つを融合させたものも今後つくってみたい。和紙は種類が多いので、多様な作品を作ることができると思っている。


■プレゼント

 同展の入場券を5組10人に。住所、氏名、年齢、職業、電話番号、本紙の感想を明記し、東京本社・読者プレゼント係まで。

■全光榮展

日時:開催中(3月15日まで)
場所:森アーツセンター
料金:一般1000円、学生800円
℡03・5777・8600


◆伝統と現代性が共存

 韓紙(ハンジ)とは、和紙に似た韓国独特の伝統紙で、楮(こうぞ)を原料とし、柔軟性や耐久性に優れ、千年以上もつと言われている。近年は工芸品などに多く使われている。全光榮さんの作品は、この韓紙で三角形のポリスチレンフォームを包み、それを同じ韓紙の紐でくくり、天然の染料で染め上げた小片を、木枠にはめ込んでゆく。何千という小片が組み合わされて、絵画でありレリーフでもある作品が完成する。

 「包み込み」と「組み立て」が基本コンセプトとなって出来上がった造形は、伝統的で作家自身のルーツと深く関わる素材に相反し、極めて現代的でダイナミックなものになっている。これまで韓国はもちろん、米国、英国、オーストラリアなど世界各国で展覧会を開催している。日本では今回が初めての紹介で、会場には、500×300×2500センチの作品や立体作品3点、それに油絵など計29点が展示されている。