世界の音楽界でアジアの音楽家の台頭が目立つようになった。都内でこのほど開催されたクラシック音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」に出演するため来日したピアニストの林東赫(イム・ドンヒョク、2001年ロン=ティボー国際コンクール優勝)など、韓日の若手音楽家4人に話を聞いた。
◆聴取の心に響く音楽を ~ピアニスト 林 東赫さん◆
99年に別府音楽祭に出たのが日本デビューだった。日本の聴衆は世界でも賢明な人たちだ。とても暖かく見守ってくれ、レベルも高い。
韓日の文化交流は、この間うまくいっているし、発展していると思う。音楽だけでなく、映画やアニメの交流も増えているが良いことだ。日本はアニメ文化、それにテクノロジーが本当にすばらしい。
私は7歳のときにピアノを始めた。兄もピアノを習っていて、自分も習うのが自然な環境だった。10歳でピアニストになろうと考えた。父の仕事の関係でロシアで学んだが、ロシアで学んだことは本当によかった。ロシアの音楽家は、個々の熱情を重視して教えてくれる。聴衆の心に音楽がどう響くかに重点を置いている。私の音楽性はロシアで作られたと思っている。
コンサートピアニストとして成し遂げなければいけないことが多々あると感じている。体調管理を大切にしながら多忙な日々を送りたい。6月に結婚したので、さらに充実した音楽活動をしたい。
両親から独立するときに(江副育英会から)支援をもらったことは、とても支えになったし感謝している。その後奨学生として何度かガラコンサートに出演したが、今回はOBとして出るので、とても楽しみだ。
韓国の音楽教育はこの間うまくいっていると思う。コリアンの音楽家が急速に世界に出てきている。アジア人の活躍は世界の音楽界の潮流になっている。これからもコリアンの音楽家が出てくるだろう。将来は後進を指導してみたい。
◆日本公演、最善尽くす ~ピアニスト チョ・ソンジンさん◆
昨年の第7回浜松ピアノ国際コンクールで、史上最年少優勝を果たした16歳の天才高校生。
審査委員長の中村紘子さんから「ピアニッシモからフォルティッシモまで非常に幅の広い演奏表現力で、音楽に対する感性がすばらしい。ずば抜けた技術を持っていながら、技術が先走るようなこともなく、音楽性を伴った、久々に聴いた桁外れの才能」と評された。
「表彰式当日は、あまり実感がわかなかったが、翌日の入賞者披露演奏会で『優勝した』と感じることができた。おごることなく、また新しい気持ちで挑戦していきたいと気持ちを新たにした」
「韓国と日本は同じ東アジアの国だし、自国の文化ではない”西洋音楽”のピアノを、お互い楽しんで学ぶことができればいい。努力を続け、謙虚な気持ちを忘れずに最善を尽くす。そんなピアニストになりたい。日本初ツアーもそういう気持ちで臨みたい」
◆日韓クラシック発展を ~ピアニスト 田村 響さん◆
2007年ロン=ティボー国際コンクールピアノ部門で優勝したが、優勝という結果を聞いた瞬間、嬉しい!というよりも、ほっと安心したような穏やかな気持ちだったのを覚えている。
結果というものがついてくるのは、こういうことなのかと思った瞬間でもあり、またそれに恥じないよう精進し続けていこうと再確認した瞬間でもあった。芸術家、そして人間として、少しずつでも一歩ずつ確実に成長していきたい。
まだまだ未熟者なので、知り、考え、創る時間を含め、長い年月が必要と感じている。
生きていく中で起こる事柄、そこでの感情など全ての経験が貴重な糧となり、成長の助長となることを願うとともに、音楽に接する事ができる事への喜びと感謝を忘れず、初志貫徹で進み続けたい。
日韓は色々な分野においてたくさんの刺激を受けあっている国ではないかと思っている。
クラシック音楽においてもさらなる発展を期待するとともに、同じアジア人として、近い国同士お互いに協力できればと思う。
そして、切磋琢磨し成長し続け、一般生活を含め、今以上にクラシック音楽文化が浸透することを心から願っている。
◆音楽のライバルとして ~チェリスト 宮田 大さん◆
2009年ロストロポーヴィチ国際チェロコンクールで優勝したことは、人生において思い出深い瞬間になった。人生の出発点が見えたコンクールだった。例えるなら、今は山のふもとなので、今後、頑張って山登りをしていきたい。
コンクールで受賞したときの気持ちを忘れずに、これからは聴衆の方々に恩返しをしていく期間だと思っている。今まで応援してくださった方々に毎日毎日変わる宮田大の演奏を聞いてほしい。どこか人間味のある、宮田の人間性がにじみ出る音楽を奏でていきたい。
8月のコンサートは、メロディーとハーモニーがとても綺麗な、親しみが持てる曲を選択した。ソリストと指揮者とオーケストラと聴衆の方々が対話をしているように演奏したい。クリエイティブにイメージを描きながら聴いてほしい。
日本と韓国はとても似ていると思う。両国民とも器用だし、柔軟性があると思う。日韓のように同じ境遇の音楽仲間が、どのように欧州などで勉強し、何を感じ、音楽にどう溢れ出てくるかを良きライバルとして見ていきたい。
*林東赫、田村響、宮田大出演の「若き才能のコンチェルト~江副育英会国際コンクール優勝者の素顔」は8月24日サントリーホールで開催。http://www.la-voce.net
チョ・ソンジン日本ツアーは7月8日から札幌、浜松、東京、山形で開催。7月27日ヤマハホールでリサイタル。http://www.hipic.jp