NPO法人「国際芸術宇宙センター」を設立して、日韓美術交流に取り組む造形作家の魚田元生さん(うおた・もとお、64)が、韓国の許榥さん(ホ・ファン、63)と共に韓国・釜山のギャラリーLUSSOで23日から「日韓交流アート・コスモス展」を開催する。魚田さんに文章を寄せてもらった。
7月23日より一週間、韓国釜山は海雲台(ヘウンデ)のタルマジコゲ(月が見える丘)地区にあるギャラリー〝LUSSO〟で、「日韓交流アート・コスモス展」を開催する。海雲台の海が一望できるとてもロケーションの良い高台にあり、風光明媚で、数々のギャラリーが集まっているところである。
日本の出品参加者28名、韓国の出品参加者27名の交流展で、ベテランから若者まで初めて参加する作家からすでに何十年も交流展をしてきている作家まで、気力あふれる作家の、そして見にきてくださる人々との出合いと交流に期待している。日本からは出品作家が10人ほど現地に行く予定である。
釜山市美術館市民ギャラリーでの開催を予定していたのだが、韓国側の都合で急遽、LUSSOギャラリーに変更しての開催となった。日本側をまとめているのが私で、韓国側をまとめていただいているのは許榥・新羅大学校教授。釜山市美術協会会長、釜山ビエンナーレ委員長、釜山市美術館長等々の重職を歴任してきた、私の韓国における30年来の大親友である。
昨夏、東京・銀座の二つのギャラリーを中心に、私が代表をつとめているNPO法人国際芸術宇宙センター(略称:アートコスモス)の設立記念展を開いた。全体テーマを「生命(いのち)」とした。記念展では、大人の作家とともに、世界の子どもたちが描いた作品を展示した。日本、韓国、アメリカ、フランス、パレスチナ、オーストラリア、スリランカなどの国から180名の子どもたちが、作品を寄せてくれた。
このとき改めて、子どもたちの、未来のエネルギーのようなものを感じた。子どもたちを集めて是非いつか、共同作業制作をしたいと思った。短い期間であってもいっしょに食事をし、共同生活をしながらひとつのものを作っていく。そこから新しいものが見えてくる、いままでみえなかったことを発見し、いままでとは違ったなにかが始まるかもしれない、そう考えたのである。
音楽、美術、映像、舞踊、文学などなにかを作り出していくという仕事はそれぞれに、ものごとの見方、意識、制作方法、それを享受する人々との距離などがちがっているので、それまでとは違った新しい見方、新鮮な視点を提供してくれるのではなかろうか。いままで関係がなかった二つのものあるいは複数のものを結び、繋ぐ。共同作業制作はそうした見方や考え方、視点をアーティストに与えてくれる有効な方法の一つである。
俳句の聖人、芭蕉。かれは単独句(発句)も作ったが多くは弟子や仲間たちとのコラボレーション、すなわち「連句」という共同作業でみずからの芸術世界を作っていったではないか。
韓国においてはまだ、作家を育てていこうとするオーナーが多いように思う。また、美術館などが地元の若い作家の作品を定期的に購入しているというのも、日本の美術界は見習わなければならないのではないか。
日本の公立美術館に予算が少ないのは理解する。そういう状況においても、美術館には人々の美術理解をうながし、人を育てるという、教育的側面もあるではないか。定期的購入はまだしも、せめて若い作家を育て、全国そして世界に向けて羽ばたくのを応援する、画期的なプロジェクトのアイデアなり、実行プログラムなりが出てこないものだろうか。共同作業は美術館と作家という関係でもできるだろう。
NPO法人アートコスモスは、微力ながら、若い作家とともにそうした状況を変えていこうと考えている。さまざまな国のさまざまな作家、人々と交流も持ち、ともに知恵をしぼり、アイデアを出し合い、ともに明日を変えていこう、変えていくことができるという信念を持って。
今回の釜山での日韓交流展もその活動の一つである。また、2011年2月には、東京の韓国文化院ギャラリーにおいて、日韓交流展を開催する予定である。テーマは「人間とは!」。
そして、昨夏の設立記念展において募集し作品と並列して展示した、全体テーマ「生命(いのち)」についての想い、詩、コメントなどの文章を、現在も継続して募集している。世界各国の幼児からお年寄りまで、職業、年齢を問わず、500人以上集める予定である。今秋までにしめ切り、今年中にまとめ、来年には本として出版できるよう、各国の知人、友人に働きかけているところである。