「アジアオーケストラウィーク2010」が、10月2日から5日まで東京と大阪で開催される。「東西アジアのサウンド沸き立つ」をテーマに、韓国から光州(クァンジュ)交響楽団、中国から厦門(アモイ)フィルハーモニー管弦楽団、そしてトルコからトルコ国立大統領交響楽団が参加する。同公演について、事務局より文章を寄せてもらった。
芸術の秋、恒例の文化庁芸術祭主催公演として行われる「アジア オーケストラ ウィーク」が、10月2日から東京と大阪で開催される。東京は初台の東京オペラシティ・コンサートホール、大阪はザ・シンフォニーホールだ。この催しは2002年に始まって以来、アジア太平洋地域から35のオーケストラが招かれ、熱いサウンドで感動的な音楽を聴かせてくれた。
ことし、韓国からは南西部、全羅南道(チョルラナムド)に位置する光州広域市を中心に世界に発信を続ける光州交響楽団が来日する。周知のように光州広域市は、韓国の民主化運動の聖地として知られるとともに、この地方全体を管轄する多くの企業の支社及び地域子会社などが集中した経済的にも目覚しい地区として注視されている。また現在、芸術、人権、平和都市として、「アジアの文化のハブ都市」を目指している。
光州交響楽団は1969年に設立、入念なトレーニングのあと76年から活動を開始した。以来、定期公演を250回以上、特別公演を600回以上開催、韓国の一流オーケストラが集う「ソウル・オーケストラ・フェスティヴァル」にも何度となく出演してきた。
09年から、韓国人で初めてドイツのハノーファー州立歌劇場首席指揮者を務めたク・ジャボムを音楽監督・指揮者として招聘。マエストロのトレーニングによりアンサンブル能力が飛躍的に高まり、その演奏は聴衆の心を深く感動させるようになった。現在では、30を超えるオーケストラがある韓国を代表するオーケストラのひとつとして、国際的にも高い評価を受けるようになっている。
ソリストのクララ・ユミ・カン、韓国出身でドイツ国籍を持つバイオリン奏者。09年「ハノーファー国際バイオリン・コンクール」第2位、ことし6月の「仙台国際音楽コンクール」優勝というすばらしい実績を持つ23歳の逸材。
プログラムには今回、尹伊桑(ユン・イサン)作曲「光州よ、永遠に」が登場する。尹は、1917年に韓国の慶尚南道に生まれ、ベルリンで活躍した韓国を代表する作曲家だ。ちょうど30年前の1980年に蜂起した光州事件の犠牲者を追悼したこの交響史的名作は、光州交響楽団が毎年5月の追悼イベントで演奏する掌中の1曲であり、それゆえに説得力があり聴き手に熱く訴えかけることだろう。
ほかに、中国からは厦門フィルハーモニー管弦楽団が登場。中国には40を超えるプロフェッショナル・オーケストラが存在するが、唯一の民営オーケストラだ。指揮者は中国初の女性指揮者で80歳を越えてなお世界的に活躍する鄭小瑛(チェン・シャオイン)と中国で学んだのち欧州で研鑽を積んだ傅人長(フ・レンチャン)、ソリストには02年の「アジア オーケストラ ウィーク」で名演を残した李傳韻(リ・チャンユン)を迎える。メインの交響詩篇「土楼回響」は、世界遺産である客家(ハッカ)族の住宅、土楼をテーマにした壮大な賛歌で、聴くものの心を揺さぶる名曲である。
もう1か国はトルコ。ことしはトルコにおける日本年。それを記念して、ベートーヴェン存命中の180余年前の1826年に誕生したトルコ国立大統領交響楽団が来日。指揮はオーケストラだけでなく、オペラやバレエといったトルコにおける舞台芸術の重鎮レンギム・ギョクメン。メインのショスタコーヴィチ「第5交響曲」における大編成の迫力あるサウンドに期待が高まる。
地球規模の変革時代にあって、大きく躍進するアジア。この「ウィーク」は国際的な文化交流としてだけでなく、音楽的に大きな意味を持つ音楽祭として、いま世界から注目されている。
なお、ことしは公演を前に、「アジアにおけるオーケストラ活動の意味」と題したシンポジウム(10月2日)が開催され、参加オーケストラと日本側の代表者により、それぞれの楽団の活動について興味深い話を聞くことができる。
10月2日午後6時=厦門フィル管弦楽団
10月3日午後2時=トルコ国立大統領交響楽団
10月4日午後7時=光州交響楽団
10月5日午後7時=光州交響楽団
会場:10月2日~4日=東京オペラシティホール
10月5日=ザ・シンフォニーホール(大阪)
料金:3000~1000円
電話:03・5610・7275(日本オーケストラ連盟)