韓国で三つのビエンナーレが開催され、話題を呼んでいる。釜山ビエンナーレは釜山市立美術館など釜山一帯で11月20日まで、光州ビエンナーレは光州市立美術館など光州一帯で11月7日まで、ソウルメディアアートビエンナーレはソウル市立美術館を中心にソウル各地で11月17日まで開催される。アート大国を目指す韓国の意気込みを感じるとともに、世界の現代美術に触れる絶好の機会だ。
釜山ビエンナーレは、日本のキュレーター、東谷隆司氏が「進化の中の生活」をテーマに展示監督を務めているのが話題だ。釜山ビエンナーレの展示監督に外国人が迎え入れられたのは今回が初めてである。
東谷氏は東京芸術大学(西洋画専攻)を卒業後、同大学院修士課程を修了。世田谷美術館勤務、東京・森美術館アソシエイト・キュレーターなどを歴任。海外では「メディアシティソウル2002」のコミッショナー、「釜山ビエンナーレ2008」、現代美術展ゲスト・キュレーターなどを担当している。
会場は現代美術展、海洋美術祭、釜山彫刻プロジェクトの3つのテーマ別に展示され、国内外の著名作家75人の作品約160点が展示されている。さらに現代美術を理解する特別展「アジアは今」も開催され、韓日中の若手作家が代表作を出品している。
また釜山市内の画廊や展示場などが様々な作品を紹介する「ギャラリーフェスティバル」、アジアの美術評論家や展示監督、作家らが参加する学術イベント「アジア美術雑誌の編集長会議」なども開かれる。
釜山では現在、釜山国際映画祭も開催中で、市民にとって様々な芸術に触れる絶好の機会となっている。
光州ビエンナーレは、韓国を代表する詩人、高銀(コ・ウン)氏の連作詩「万人譜(10000LIVES)」をテーマに開催。
アンディ・ウォーホル氏の「タイムカプセル-27」は、母親の手紙やはがきなどを用いて、母親への愛を表現している。アリス・コック氏の家族へのビデオレター「家族台本」は、離れたところにいても大切な存在の人を身近に感じさせる。
崔光鎬(チェ・グァンホ)氏の連作「家族」は、愛する家族のヌードを撮ったモノクロ写真で、家族の親密さ、喜び、苦痛を表現した。一家族の一代記が浮かび上がる作品だ。
ポール・フスコ氏は、暗殺されたケネディ元米大統領の葬儀列車を撮影した写真を使って、1960年代、著名人の相次ぐ死に衝撃を受けた米国大衆の姿を映し出した。グスタフ・メッツガーによる「歴史的写真」は、ユダヤ人迫害の写真を大きく拡大して展示し、差別の醜さを人々に示した。
他に「テディベア・プロジェクト」というコーナーでは、1900年から1940年までのテディベアを抱える人物を撮影した写真3000枚余りと、実物大のテディベアが展示されている。
「ソウル国際メディアアートビエンナーレ」は、ソウル市立美術館を中心に開催されているソウル唯一の国際ビエンナーレ。世界的なIT大国、先端メディア文化都市としてのソウル市を位置づけるためのアートイベントとなっている。 今回のテーマは「信頼」で、人間と世界の関係を様々な角度から解き明かす。
韓国からはイム・ミンウク、ノ・スンテク、チョ・トクヒョン、キム・ボム、パク・チャンギョンら、海外からは今年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞したタイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督など、国内外合わせて46人が出展している。
ネットなどのニューメディアだけでなく、印刷媒体などのオールドメディアまでを包括的に扱い、この10年間のメディアの変化が理解できるイベントとなっている。