韓国で860万人動員の大ヒット映画『国家代表!?』が23日から日本公開され、話題を呼んでいる。90年代半ば、冬季オリンピックの誘致のため、初心者中心で急ぎ構成されたスキージャンプ国家代表チームの長野五輪での奮闘を描いたスポーツ映画で、海外養子として米国で育った青年の母親探しも盛り込まれている。キム・ヨンファ監督に話を聞いた。
――なぜスキージャンプの国家代表チームを素材に?
スキージャンプの選手たちがいるけれども、軍隊に行きたくなくて国家代表になったという、その程度の話とスキージャンプをしているスチール写真1枚をもらった。それを見た時に、私が観客に感じてもらいたい映画とこの作品が一致するのではないかと思った。
――映画には再チャレンジといったメッセージが込められているが。
再チャレンジは、国家が主導してできるものではない。あくまでも個々人が、やっていかなければならないことだ。人は誰でも自分の人生を、主人公として生きている。自分の人生にベストを尽くせば、広い意味で、それが国家の発展につながっていくと思う。だから、自らを愛し、自分が自分の人生の代表になるという気持ちを持って生きていけば、やがてそれが国を愛することにつながっていくということを描きたかった。
――なぜ海外養子を主人公にしたのか。
実は私には似たような家族史がある。私が5歳ぐらいの頃、ある人物が母を訪ねてきた。実は母が別の場所で産んでいた子どもだった。私から見ると兄になる。その時は詳しいことは分からなかったが、後になって、兄はどんな気持ちで生きてきたのか考えるようになった。また、やはり海外養子で、今オランダに住んでいる人がいる。彼はカーレーサーで、レース用の車輌に世宗大王(セジョンデワン)とかコリアと書いている。自分が有名になったら、母が会いに来てくれるのではないかという気持ちで、そんなことをしていている。それを見た時に、物凄く胸が痛んだ。
海外養子のキャラクターは、当初は2番手に考え、別のキャラクターを主人公にしようと思っていたが、やはりこの人物を主人公にしようという気持ちになった。
――実話に基づいていると聞いたが。
歴史的な事実や事件など、実際に起こった部分は実話をそのまま取り入れているが、それ以外のプロセスや人物のキャラクターなどは、新たに作り変えている部分が多い。なので、すべて嘘だと思っても構わないし、すべて実話だと思っても構わない。
――今年の冬季五輪でもスキージャンプ韓国代表チームが注目されたが、彼らとの交流は続いているのか。
交流は続いている。映画が成功したことで、彼らを取り巻く環境が急激に変わった。例えばスポンサーが付いたり、生活が向上した。練習には費用がかかるが、それもかなり余裕ができたと聞いている。映画もヒットし、彼らにとっても非常に良い結果が出せたので良かったと思う。ただ、今後2~3年で成績が良くなければ、また関心が遠ざかってしまうだろう。
――スキー指導はどのように行ったのか。
撮影当時、私はスキーがまったく出来なかったが、実際の国家代表選手から指導をしてもらった。今では、来年行われるスキー講師の試験を受けるほどになった。撮影中は、選手やコーチに俳優たちをマンツーマンで指導してもらった。俳優たちは国家代表選手と同じトレーニングを、3カ月間こなしてくれた。
――スピード感や競技の迫力を出すためにCG(コンピューターグラフィック)を使ったのか。
CGのカットが全部合わせると1100くらいある。CGを使った映画はあまり好きではないが、今回のCGは本当に上手くできた。CGを多用したのは、どうしてもCGを使わないと撮れないシーンが多かったからだ。
――日本公開が始まったが、どう見てほしいか。
タイトルを見て、韓国の国家代表を称える作品だと思う人がいるかも知れないが、この映画は、あくまで個人の物語だ。
特に最後の30分の五輪シーンに、自分が語りたいと思っていたことが入っている。この映画から元気や生きる力を感じてくれたらうれしく思う。